まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「さよならは仮のことば」谷川俊太郎~今回の「トイレの詩」~

久しぶりにトイレの詩を貼り替えました。
今回の詩は「さよならは仮のことば」(岩波文庫刊 「自選 谷川俊太郎詩集」所収)です。

命はつながって行くものなのだ、
たとえ「そのひと」の姿は見えなくなってしまっても、
思い出や記憶よりももっともっと根源的なもので
ずーっとずーっとつながって行くものなのだなあ、などと
今はもう会えなくなってしまった人たちのことを思いつつ。

さよならは仮のことば  谷川俊太郎

夕焼けと別れて
ぼくは夜に出会う
でも茜色の雲はどこへも行かない
闇にかくれているだけだ

星たちにぼくは今晩はと言わない
彼らはいつも昼の光にひそんでいるから
赤んぼうだったぼくは
ぼくの年輪の中心にいまもいる

誰もいなくならないとぼくは思う
死んだ祖父はぼくの肩に生えたつばさ
時間を超えたどこかへぼくを連れて行く
枯れた花々が残した種子といっしょに

さよならは仮のことば
思い出よりも記憶よりも深く
ぼくらをむすんでいるものがある
それを探さなくてもいい信じさえすれば