まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

りんごジャム

紅玉が出回る季節になった。
農協直売所に行くと、小ぶりな紅玉が5個で250円前後で売られている。
3袋買って、2種類のジャムを作ることにした。
 
りんごを割って、芯を取って、皮をむいて、いちょう切りにしてレモン水に浸けて。
機械作業をこなしているうちに、
去年11月のことを思い出した。
 
 
かあさんが突然死した直後の仙台の実家。
わたしはずーっと実家に泊まってとうさんと暮らしていた。
職場の海外研修に行っていたねえさんを待つために、
かあさんの遺体はギリギリまで実家に安置してあった。
6時には起きてとうさんと家中の掃除をする。
玄関や表通りも掃き清める。
かあさんの棺の小窓を開けて「おはよう、かあさん」とあいさつする。
それから、とうさんと一緒につくった朝ごはんを食べる。
そんな数日が過ぎて行った。
 
その日、とうさんは冷蔵庫からヨーグルトを出してきた。
かあさんに頼まれて買ってきたのに、手つかずのままになっていたヨーグルト。
すると、とうさんは「あっ、そうだ」と言い、冷蔵庫からジャムのびんを出してきた。
かあさんが作ったりんごジャム。
亡くなるほんの10日ほど前に作った、最後のりんごジャムだった。
「いいの、食べちゃって?」
「ダメになったらもったいないべ。美味いうちに食うべや。」
 
そこで、わたしたちはかあさんの最後のジャムを食べた。
薄桃色をした、輝くような透明感のある、美味しいりんごジャムを。
「もったいないけど、やっぱり美味しいね」
「当たり前だべや、おかあさんが作ったんだぞ。」
 
最高にもったいなくて最高に美味しいりんごジャムは、
ちょっぴり涙の味がした・・・。
 
・・・今年のジャムは、とうさんにも食べさせてあげるつもりだったんだけどなあ。
今年のジャムも、ちょっぴり涙の味がした。