まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「避難スイッチ」を正しく押すには~NHKスペシャル「誰があなたの命を守るのか”温暖化型豪雨”の衝撃」を見た~

去る6月30日に録画してあったのに

今まで見ていなかったこの番組。

台風19号が今週末

「今年最強レベルのまま列島を直撃か」というニュースに

慌てて視聴した。

たった50分間の番組だったけれど、

背筋が凍る思いがして途中ゾワゾワと鳥肌が立ち、

見終えた今は「すぐやらなくちゃ!」という

気持ちにさせられている。

 

平成最悪の豪雨災害となった昨年7月の西日本豪雨

この番組ではその検証と対策を多角的に行っている。

自治体担当者、家族を亡くした遺族、九死に一生を得た被災者、

防災対策の研究者等様々な人たちの話や、

降水量、浸水状況、避難指示のタイミングなどの膨大なデータ、

研究機関での浸水シミュレーション等が

非常に分かりやすく端的にまとめられていた。

 

この中でわたしが新たに知った言葉が

「避難スイッチ」である。

 

「他人事だったからでしょ!」と言われてしまえば

否定出来ないのだけれど、わたしは

豪雨災害のニュースに接するたびに

「避難指示(最近だと警戒レベル4)が出てるのに

どうしてみんな逃げずに取り残されてしまうんだろう」

といぶかしく感じていた。

この番組の中で紹介されていた、広島市立大学が実施した

市民1000人を対象としたアンケートの結果を見ても、

西日本豪雨災害の折に広島市民に出された

避難指示に従って避難した人はたった31人だけだったのだ。

「避難指示が出ていたことを知ってしましたか」との問いには

実に93%もの人が「知っていた」と答えたにも関わらず、だ。

 

「きちんと避難指示が出され、それが正しく伝わっているのに、

なぜ避難行動に結びつかないのか」

これを解く鍵が「避難スイッチ」という考え方なのだと言う。

わたしたち一人ひとりに「逃げなければいけない」と思わせ、

実際の行動へと移らせる「スイッチ」が「避難スイッチ」だ。

番組の中では実際に避難した31人の「避難スイッチ」が

大きく分けて3つあったことが紹介されていた。

まず「避難指示の情報」。

これだけで避難した人は、たったの8人だけだった。

それから「環境の異変」。

川の流れや雨の降り方等、身の回りの環境の異変が

直接避難行動に結びついた人が5人いた。

最後に「他者からの働きかけ」。

自分は逃げる必要性を感じていなかったけれど、

隣近所の人が「逃げよう」と言って誘ってくれたことで

避難した、という人が何人かいた。

実際にはこの3つの「避難スイッチ」が複合的に作用して

避難行動を起こした、と答えた人が多かったようだ。

 

わたしは以前、自然災害による被災者支援のお手伝いを

したことがあった。

その際にちょっと驚いたのは、かなりの割合の被災者が

「行政まかせ」と言いたいような姿勢だったことだ。

生活上の困りごとから家族関係のことまで、

何から何まで「行政が」「役所が」「担当者が」

という人が多い印象を受けた。

この番組の中で印象に残ったのは、

「あなたの命は誰が守るのか?にまで『行政』と

答えてしまいそう(なほど「防災」が「行政まかせ」に

なっている)。

しかし、『あなたの命を守るのはあなた』なのです」

という東大の先生の言葉だった。

行政にできることはもちろんたくさんある。

豪雨災害に関して言えば、

川の支流などにも水位計を設置して監視体制を整えたり、

区域をより細分化してきめ細かく避難情報を出せるようにしたり、

避難所の配置を見直したりと言ったことは、

行政にしか出来ない災害対策だろう。

でも、日頃から避難に必要なものを準備しておいたり、

情報の洪水の中から自分に必要な情報をキャッチしたり

(豪雨のためにテレビが映らなくなるまで、

衛星放送でひいきの野球チームの試合が

見られたりする環境の中でも!)、

家族と連絡を取り合って避難したり、

自分の力では「避難スイッチ」をオンに出来ない

近所の「災害弱者」に声をかけたり、

必要に応じて一緒に連れて逃げたりすることは、

わたしたち一人ひとりにしか出来ないことなのだ。

 

番組の最後に、わたしたち一人ひとりが

今すぐ為すべきことが青い文字で示された。

 

「あなたの住む地区の

ハザードマップを確認してください」

「家族の避難場所を決めてください」

「『警戒レベル4』は

全員が逃げなくてはいけないタイミングです」

 

そして

「あなたの『避難スイッチ』はなんですか」

という文字が出て、番組は終わった。

 

両親と義父は既に他界しているけれど、

今年79歳になった義母は20キロほど離れた町で

独り暮らししている。

インターネットが使えず、しかも耳が遠い。

わたしたちが住んでいる社宅は川や山から遠く、

ハザードマップで見ると割合安全な場所にあるけれど、

義母が住んでいる場所は地盤が弱く、

すぐ近くを小さな川が流れており、安全とは言い難い。

「いざ」となったら車で迎えに行く必要があるだろうが、

往復40キロあり、道が混雑した場合、避難のタイミングを

逸してしまう可能性もある。

それに、義母は「避難なんて、必要ない」と

頑なに拒否しそうだし…。

そこをどうするかが我が家の喫緊の課題だなあ。