まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

SMAPという人々

わたしは特別SMAPのファンと言うわけではなく、
ましてやジャニーズのファンでも何でもないのだが。

SMAPはこのまま消されてしまうのだろうか?

わたしが小学校で教えていた頃、
「光ゲンジ」というスーパーアイドルグループがすさまじい人気だった。
どのくらいすさまじい人気ぶりだったかと言うと、
「あれに比べたら『嵐』の人気なんかまだまだ」と思うくらいの人気ぶり、
「光ゲンジファンにあらずんば、女子にあらず」ってくらいの勢いだったのだ。

でも、そんな彼らの末路は・・・。
たまにゴシップやスキャンダルで表に出て来る「元・光ゲンジ」たちは、
やつれて荒み切った「堕ちた偶像」だ。
パラダイス銀河」なんて曲に乗ってローラースケートで滑りまくり、
テレビ画面からスパークするような輝く笑顔を放射していた人々のあまりの変貌ぶりに、
彼らの絶頂期を一応見聞きしていた身としては、
どうにもやるせない気持ちになる。

ジャニーズ事務所と言うところは、
ブラックホールのようなところなんだろうか。
すさまじい引力を持っているから、
次から次へと可愛い男の子たちが吸い込まれて行くけれど、
いざそこから出ようとしても、
すさまじい重力に押しつぶされてしまい、
なんぴとと云えども無傷で脱出することは出来ない・・・。

そう言えば「奇跡的に無傷で脱出出来た」と言われている本木雅弘さん(「おくりびと」「坂の上の雲」)も、
ジャニーズ時代(「シブガキ隊」という三人組で活躍していた)の逸話等については、
固く口を閉ざしているみたいだもんな。
多分、「一切口外せぬこと」が「奇跡の独立劇」の条件だったのだろう。

わたしは、SMAPには国民栄誉賞を上げてもいいんじゃないか、
と実は思っているのだ。
SMAPは今年でデビュー25周年。
それは、すなわちバブル崩壊後の年月とぴったり重なる。
バブル崩壊は、日本人にとって本当に辛い出来事だったと思う。
先の大戦での壊滅的な敗北からすさまじい復興を遂げ、
「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」などと持ち上げられて、
日本人は心底浮かれてたのだ、バブルがはじけるまでは。
それはもう、一億総藤原道長
「この世をばわが世とぞおもふ望月の欠けたることもなしとおもへば」状態で。
それが、昭和天皇崩御、昭和の終焉とともにバブル崩壊
最初の数年こそ「まあ、またすぐに景気良くなるさ」
というようなのんびりとした空気が流れていたけど、
それが、一向に景気は上向かず、
それどころか、バブルまではライバルになるとも夢にも思ってなかったような国々に、
家電とかデジタル技術とかの得意分野で追いつかれ、追い越され、
「ナンバー・ワン」どころかトップテン圏外にずるずると後退して行くのを止められない現実に、
わたしたちバブルを経験した世代は本当に心がずる剥けになるような痛みを感じて来た。

日本の苦難は先の見えない不景気だけではなかった。
SMAPの25年は我が国がすさまじい天災に次々と襲われた25年でもあった。
阪神淡路大震災があった、そしてもちろん東日本大震災があった。
それだけじゃない。
新潟でも、長野でも、北海道でも、宮城でも、そこここで大きな地震が頻発した。
さらには水害に雪害に風害、高潮に土砂崩れ、鉄砲水・・・。
80を過ぎたような先達も「こんなこと経験したことはなかった」と驚くような災害が、
日本中で毎年起きるようになった。

そんな時代、いつもSMAPの曲が流れていた。
どんなに不安な時でも、テレビを点ければSMAPがいつもと変わらぬ笑顔で歌い踊り、
コントで笑わせ、ドラマで頑張っていた。

わたしはSMAPの「夜空ノムコウ」が大好きだ。
曲中、こんな歌詞がある。

 あの頃の未来に ぼくらは立っているのかな
 すべてが思うほど 上手くは行かないみたいだ
 
この歌詞を聞いて、心に痛みを覚えずにいられる大人が居るだろうか?
さらに歌詞はこう続く。

 このままどこまでも 日々は続いて行くのかな
 雲のない星空が 窓の向こうに続いてる

「ああ、なんて無力な自分なんだ、日常にただ流されて行くしかないのか」
そう無力感に支配されてしまいそうになるけれど、
歌はこう終わるのだ。

 あれからぼくたちは 何かを信じて来れたかな
 夜空の向こうには もう明日(あす)が待っている

辛かったとき、悲しかったとき、この曲にどれだけ励まされたか分からない。
特に東日本大震災のあと、
わたしはこの曲とSMAPの「どうか届きますように」を繰り返し繰り返し聞き、
勇気と元気をたくさんもらった。

彼ら5人が唯一揃って出演している「SMAP×SMAP」では、
番組の最後、今でも彼ら5人が東日本大震災被災者救援のために、
募金を呼びかけ続けている。
それも、ずっと前に収録した同じVTRを流しているのではなく、
毎回違う衣裳を着て新しく収録したVTRが流れる。
それに、マスコミの報道によれば、だけれど、
彼らは個人的に巨額の寄付(数億円にもなるらしい)を被災者支援のために行ったそうなのだ。
「こんなに寄付しました」と吹聴することもなく。

わたしのイメージでは、ジャニーズ事務所ブラックホールであり、
ジャニーズアイドル≒角兵衛獅子である。
子供の頃にジャニーズに入った可愛い男の子たちは、
歌と踊りとアクロバティックな動き(バック転とか)を叩き込まれ、
恋をしたり勉強をしたりと言った普通の生活から切り離され、
文字通りの「偶像」としてのみ生きることを強要される。
そして、商品価値が無くなったところで、
ブラックホールからポイと吐き出される。
後に待つ人生は、冒頭で紹介した「光ゲンジ」が典型である・・・。

たった一回の試合で「国民を勇気づけた」(わたしは勇気づけられた覚えもないが)選手とか、
国民栄誉賞ってとにかくスポーツ選手にばかり与えられている。
でも、わたしは、散々述べて来たような理由で、
SMAPこそ、国民栄誉賞にふさわしいのではないかと真剣に思っているのだ。

それが、彼らの「これから」にどれだけの助けになるかは分からないけれど。