まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

子供に手を振っただけで・・・。

疑心暗鬼を生む。
世界でもトップクラスの治安の良さを誇るはずの日本で、
人々の心の中に実体のない暗鬼が拡がっているらしい。

先日耳にした話。
「犯罪を未然に防ぐ」という観点から、
「心配なことがあったらお気軽に」ということで、
昔に比べると警察に相談することのハードルが低くなったのは事実だけれど、
「こんなことまで心配に思っているのか?!」と思うような相談が急増してるんだって。

例えば、「子供が公園で遊んでいたら、見知らぬ女性に手を振られた。
心配なので調べて欲しい」というようなものがあったそうで。
警察としては相談を受けた以上は放って置くという訳にも行かず、
調べたところ(田舎なので簡単に分かったらしいが)、
公園の近所に住んでいる女性だったことが分かったんだって。
話を聞くと、その女性には子供がなく、
散歩しながら公園で子供たちが遊んでいる姿を見るのを楽しみにしていて、
子供と目が合うと手を振ってただけだったんだって。
それでも、一応「知らない人に手を振られただけで心配に思われる親御さんもいますから」
ということは伝えなくちゃならなかったそうで・・・。

こんなのって、おかしくない?
子供を心配する気持ちは分かるけど、心配し過ぎじゃないか?と思う。
わたしだって、買い物してる時とかによその子と目が合ったら笑いかけたり、
手を振ったりしちゃってるよ。
一人ぼっちで泣き喚いてる子に「どうしたの?」って声を掛けたことだってあるし、
結局迷子になってた子をお店の人に頼んだことだってある。
でも、こういう話を聞くと、「もうそういうことするのは止めておいた方がいいのかな?」
という気持ちになってしまう。
先の女性だって絶対そう思ったことだろう。
散歩に行っても公園で子供たちの遊ぶ様子を見たりせずに、
そそくさと家に帰るようになってしまうことだろう。
「心配のタネが消えた」と通報した親は思うかも知れない。
でも、実はそのことが、遊んでいる子供たちを見守ってくれていた善意の第三者を、
失ってしまう結果になったことには多分気付かないのだろう。

確かに、今の時代恐ろしいのは、
悪いことをする人とそうじゃない人との見分けが全くつかないことだ。
不審者っぽい人が全然怪しくなくて、逆にまともそうな人が子供をさらって殺したりする。
でも、だからと言って暗鬼が跋扈(ばっこ)するのを許してしまえば、
自分の身を完全に自分の力だけで守るしかなくなり、
そのことで世の中は一層殺伐とし、生きづらくなって行くように思う。

少なくとも、善意の第三者をがっかりさせてはいけないんじゃないかな?
ご近所づきあいとか、地域のつながりとかがどんどん薄れてしまっている今、
最後の頼みの綱は善意の第三者だけなんだから。