まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

夫、義父を怒鳴る

今日は義父を歯医者へ連れて行く日だった。
義父が治療を受けている間、待合室で義母とわたしはせっせと情報交換する。
 
「この間、メマリー飲まないってごねた時、
息子(=夫)がうちに来てくれたでしょ、あの時息子に手ひどく怒鳴られて。
それが余程ショックだったらしくて、今日もまたその話をグチグチとしてたのよ。
親に向かってなんだ、何様のつもりだ、俺を二度も怒鳴りやがったって。
でもね、どうして怒鳴られたのかはちっとも覚えてないの。
ただ息子に怒鳴られた、馬鹿にしやがって、だけ。
それで、ご飯食べたくない、薬も飲みたくない、だからね。
全く、困ったことになったもんだ。」
 
メマリーが余りに微量過ぎて効きがあっと言う間に悪くなり、
考え方が被害妄想サイドに偏ってしまうようになった義父に、
医師の指導でメマリー5mg錠を朝晩1錠ずつ飲ませることにしたのだが・・・。
「医師がそうするように言ってたから」といくら言ってもダメ、
頑として夕食後の薬を拒否する義父に手を焼いた義母が夫に泣きつき、
仕事が終わった後に夫が実家へ行ったのが今週の月曜のこと。
義父は薬を飲まずに酒を飲んでいたそうだ。
そして、いつものように義母にしつこく絡み始め・・・。
夫が中高生だった頃と同じ状況になったのがまずかったのだろう、
途中まで義父を穏やかに諌めていた夫が突如激昂したそうだ。
夫は椅子から立ち上がり、すさまじい剣幕で何事かを怒鳴ったって。
それに対して義父が何か言い返したら、ますます激昂してさらに怒鳴ったらしい。
でも、義母は耳が悪いから、一体何と怒鳴ったのか全く聞き取れなかったそうで。
「いやいや、驚いた、びっくり仰天だった。
息子があんなに怒ったの、初めて見た!」
と、面白がるような口調で言っていた。
 
・・・全然分かってないんだなあ、と残念に思った。
義父と義母の50年戦争を物心ついた頃から見せられていた夫。
5歳違いの妹が生まれるまでの間、「たった一人の子供」として、
緩衝剤の役割を全て担わなければならなかった夫の気持ちが、
義母には全く伝わっていないことが悲しかった。
DVに耐え続けることは大変なことだったとは思う。
でも、「母親を守りたい」「二人を仲良くさせたい」と思いつつ、
何の役にも立てず、目の前で繰り返されるDVを見つめ続けなければならなかった経験が、
幼かった夫の心を深く傷付け、性格の根底をどこか歪んだものに変えてしまったというのに、
母親であるのにそこに思いが全く至らず、ただ夫が怒鳴った姿を「生まれて初めて見た!」
と面白がり、義父を「いい気味だ」と嗤うのみの義母の心根が悲しかった。
そして、そんな夫のことをそれとなく話しても、
全然興味なさそうな義母にがっかりさせられたのだった。