まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

もったいなくて、とても美味しいジャム

かあさんが亡くなって独り残されたとうさんの世話をしに実家へ行った。
とうさんは、かあさんが買ったのを食べずにいたというヨーグルトを出してくれた。
・・・りんごのジャムをかけて。
 
かあさんが今年作ったりんごジャム。
亡くなるほんの10日ほど前に作った、最後のりんごジャム。
紅玉で作った、透き通ったピンクの、輝くようなりんごジャム。
 
わたしたちはヨーグルトを食べた。
かあさんが作ったジャムは、いつものように美味しかった。
それがいつもと違うのは、
今食べてしまったら、もう2度とかあさんが作ったジャムを食べられなくなってしまうことだった。
「もったいないけど、すごく美味しいね。」
わたしたちは、大事にヨーグルトを食べた。
もうこの世にはいない人が作った、最後のりんごジャム入りのヨーグルトを。
 
かあさん。
わたしが作るジャムはちょっと味が違うけれど、
毎年りんごジャムを食べるたび、
きっと今日のことを思い出すと思うよ。