「よっ!」「おっ!」
ボランティア活動の日のひそかな楽しみ。
それは、亡くなったとうさんとよく似たGさんと
握手して帰って来ることだ。
Fさんに暴言を吐かれているTさんなどに声を掛けて握手し、
ドア近くの席に座っているGさんのところへ行った。
「Gさん」「・・・ん?」
「Gさん!」「・・・えっ?」
「Gさん!」「はい!」
「わたし、もう帰る時間なので、握手していいですか?」
「ああ、もちろん、いいよ!」
わたしはGさんの手を握って、
「また来ますね!風邪ひいたりせずにお元気でね!」
「ああ、ありがとう!」
握っていた手を離したら、
Gさんは右手を手刀みたいな形にして頭の横でピッと動かし、
「またね」という動作をした。
「あっ、この動作・・・!」と思った。
とうさんが生きていた頃。
実家でも、病院でも、老人ホームでも、集中治療室でも、
わたしととうさんのあいさつは、
「よっ!」「おっ!」だった。
わたしが「よっ!」と声をかけると、
とうさんが「おっ!」と応える。
そのときにとうさんはいつも手を手刀みたいな形にして、
頭の横でピッと動かしたのだ。
最後の最後まで、わたしととうさんの合言葉みたいだった、
「よっ!」「おっ!」。
・・・ダメだ、昨日、ボランティア先では泣かなかったのに、
やっぱり涙が出てしまった・・・。