まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

百日紅

町のそこここで百日紅の花が咲いている。

その濃いピンクの花を見るたびに

かあさんのことを思い出す。

「子供だった頃ね、百日紅の木から落っこちたことがあったのよ。

登ってるうちにつるん!と手が滑ってね。

・・・あとで怒られた、怒られた、

『あんたは一体何やってるの?!』って母親にこっぴどく叱られたっけ」

毎年庭の百日紅が咲くとかあさんは決まってこの話をした。

とにかく厳しくて一分の隙もない完璧主婦だったかあさんが

小さな女の子だったことを想像するのも大変だったけれど

それ以上にかあさんが木登りするようなお転婆さんだったこと自体が

とても信じられなかった。

でも、その話をするかあさんはいつも楽しそうだった。

心の底から楽しそうだった。

そして、わたしはそんなかあさんを見るのが好きだった。

百日紅の花を見るたびに思い出すこと。