まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

DVの被害者とは?

何度も記事にしている通り、
現在老人ホームに入っている義父は筋金入りのDV男だった。
義母はそのDVに50年さらされて来たのだ。
「わたしは、子供たちに恥をかかせたくないからと
必死で耐えてきたんだ」と義母は言うのだが・・・。
 
実はDVでひどく傷付いたのは子供たちだったことを義母は知らない。
 
職場だった学校で知り合って義母が義父と結婚したのが24歳のとき。
大人になってからのことだったのは当然だ。
でも、義父母の子供たちはDVを目撃しながら育ってしまったのだ。
まだ物心もつかないような幼い頃から、
繰り返し繰り返し父親が母親に暴力を振るう場面を目撃し、
それで母親が泣いたり苦しんだりする姿を目撃し、
父親について母親が激しい言葉で非難するのを聞きながら育つ。
特に長男だった夫は「自分が二人を仲良くさせなくちゃ」という気持ちだったようだ。
でも、幼かった夫がどんなに仲良くしてくれるよう頼んでも、
義父によるDVは止むことなく繰り返された。
幼かった夫は自分の心の守り方も知らないまま、
二人の果てしないケンカと義父による暴力とでどんどん傷付いてしまったのだ。
 
そう言えば。
うちの息子と幼稚園で仲良しだったYくんのこともあったなあ。
Yくんは優しい男の子だったけれど、
決して目が笑わない不思議な子だった。
いつもはおとなしいのに、
ちょっとしたことでブチ切れてしまったようになって先生方を困惑させた。
卒園後、Yくん一家は県外へ引っ越したのだが、
幼稚園の運動会に参加しに来たことがあった。
(小さい幼稚園で、卒園生による綱引きもあった)
久しぶりに会ったYくんのお母さんとおしゃべりに夢中になっていたら、
Yくんの様子がおかしくなった。
(その日はYくんのお父さんが自家用車で送って来ていた)
「クソ女、早くしやがれ」
「このグズ、さっさとしないとどうなるか分かってるのか」
そわそわした様子で、信じられないような口汚い言葉をお母さんに向かって吐くYくんを見て、
「そうか、Yくんのお父さんはDV男なんだな。
こういう言葉は普段お父さんがお母さんに浴びせてるものなんだろう。」
とピン!と来た。
その後Yくんの家に遊びに行ったとき、
「これ、面白いよ」とYくんがPCで見せてくれた画像が、
ものすごく残酷でグロくて、うちの息子は「見ていられない!」と感じたそうなのに、
Yくんは「可笑しい、可笑しい」と大笑いしていたそうで、
「なんかね・・・付いて行けない、Yくんおかしいよって思ったんだ」と
後で息子が言っていたっけ。
一人っ子だったYくんは、相談し合う兄弟もいないまま、
たった一人で繰り返されるDVに傷つき続けていたのだろうと思う。
だから、決して笑うことのない目を持った子になってしまったのだろう。
 
うちの夫もそうだ。
「子供なんて犬畜生とおんなじだ。
殴らなきゃ、何も分かるようにならない」
初めての子供が出来たと分かったとき夫が口にした言葉と、
それを聞いた時の恐ろしい気持ちとを、
わたしは死ぬまで忘れることはないと思う。
そして、息子に向かって人が変わったかのように怒鳴り散らし、
ちょっとしたことで暴力を振るっていた夫の姿も。
 
DVが子供に与える影響の大きさは計り知れないほどだと思う。
Dvの影響というと、どのくらいひどい怪我をしたかに目が行きがちだが、
実は外から見えない心の傷を、心が柔らかい子供のうちに受けてしまうことの方が、
ずっとずっと深刻なんじゃないか・・・とわたしは思っているのだ。