まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

仙台市内にあるブラック老人ホームの話

わたしは今大激怒している。
 
介護付き有料老人ホームでは、法令により週に2回の入浴が義務付けられているそうだ。
とうさんが入っていた老人ホームでは週に1回だけ。
週にもう1回増やしてもらいたければ、1回当たり1000円プラス消費税を払わなければならなかった。
「法令違反だ!やっとあそこのブラック老人ホームのひどさを訴えることが出来る!」
と思ったのも束の間。
取ってあったとうさんの入居契約書を見たら、表紙に大きくこう書いてあった。
「有料老人ホーム」。
「介護付き」みたいな説明をしたけれど、実際は「介護付き」じゃなかったのだ。
これなら、週に1回しか入浴させなくても法令違反には当たらない。
 
くそーっ。
さすがに業界大手だけあって、その辺は抜かりない様子だ。
でも、このままだと、うちのとうさんみたいな目に遭う人が後を絶たないことになってしまう。
 
そんな訳で自分のブログで告発することにする。
名誉棄損で訴えられると困るので、老人ホームの名前は出さない。
しかし、最寄り駅は東北本線で仙台から30分以内、
そしてすぐそばを新幹線の高架橋が通っていて、巨大なパチンコ屋が近くにあるホームだ。
 
・ブラックな実態その1~入浴回数~
入浴は週に1回だけ。
あと1回だけ増やすことが出来るが、その場合1回あたり1000円プラス消費税がかかる。
 
・ブラックな実態その2~少なすぎる介護職員~
ワンフロア当たり実働している介護職員の数は3人程度。
それで要介護5の人まで無制限に受け入れている。
ワンフロア当たり20部屋あるので、職員の姿を見ること自体まれ。
(わたしは、週に3回ほど面会に行っていたが、何か頼もうと思っても職員はいつもいなかった)
 
・ブラックな実態その3~利用者をほったらかし~
実態その2から派生する当然のこととして、利用者は一日中ほったらかし。
わたしの父は自力歩行が可能だったが、「転倒すると困る」という理由で、
トイレに行く際には必ず職員を呼ぶように言われていた。
しかし、コールボタンを押しても職員は常に多忙で来ないため、
父は自室隣りにあったトイレへいつも自分で歩いて行っていた。
「職員の言うことを聞かず、勝手にトイレに行くので困る。
認知症用センサーマットを敷かせてもらいたい」とホームから連絡があり、
マットをベッド下に敷かれていた。
認知症がなかった父はマットをベッドの下へ入れてしまい、踏まないようにしてトイレに行っていた。
そしてトイレから戻ると、マットを元通り敷いておくのだった。
「○○さん、そろそろトイレ大丈夫ですか?」
などと職員が声を掛けに来ることも面会中一度もなかった。
 
・ブラックな実態その4~レンタル料で介護保険を使い尽くす~
わたしは父を、老人保健施設に入れたかったのだが、
介護保険の区分変更が病院の退院までに間に合わず、
仕方なく父を病院から紹介された老人ホームに入れることとなった。
説明の際、介護保険を使って外部からリハビリスタッフに来てもらい、
機能回復訓練を受けられる、ということだったのだが、
実際には高額な特殊な車いすなどのレンタル料で介護保険はほぼ全額使い尽くされてしまい、
入居後は一切の機能回復訓練を受けられなかった。
入居前病院で機能回復訓練を毎日受けて自力歩行できるようになっていた父だったが、
一日中自室のベッドに寝たきり、移動はすべて車いす、という状態で、
急激に運動機能がダメになっていった。
(それで、保険の区分が「要介護1」になってすぐ、老健を回って待機リストに入れてもらった。
父がくも膜下出血で入院したのは、老健の人が面接に来ることになっていた日だった)
 
・ブラックな実態その5~粗末すぎる食事~
「ここのメシはひどいんだぞ、肉でも魚でもな、ほんのこれっぽちなんだ」
面会に行くたびに父はそうわたしに訴えながら、直径10センチ足らずの小さな円を
両手の親指と人差し指とで作って見せた。
「おかずはほんのちょっとでな、ご飯ばっかりどんぶりみたいなので出てくる。
テーブルに練り梅だの置いてあるから、それでどんぶり飯食ってるんだ。」
ほんの1か月前、栄養失調状態が改善したからと病院から放り出された父だったが、
くも膜下出血を起こして入院した時には「重い栄養失調状態で外科的処置は不可能」と言われたのだ。
栄養失調で入院していた、と入居前に話したら、ケアマネさんが
明治乳業から出ている栄養補助ドリンクの試供品がありますから、
おとうさまの食事の際にお出ししますね」と言っていたのに、
父に面会に行くたびに聞いてみても「一度も飲んでない」という返事ばかりだった。
 
・ブラックな実態その6~水増し請求~
激しい腰痛を訴えた父を、提携外のペインクリニックへ一度だけ連れて行った。
片道20分ほどの送迎だけをお願いし、付き添いはわたしが行った。
しかし、父の死後送られてきた請求書を見たら、
送迎の時間だけでなく、付き添いの時間分(全部で3時間)お金を取られていた。
 
・ブラックな実態その7~緊急時の判断を家族に丸投げ~
父がくも膜下出血で入院する前日夜のこと。
ホームから電話が来た。
トイレに連れて行ったら、足が何だか前に出ないようだ、
病院に連れていくが、明日でいいか?という電話だった。
素人の悲しさ、わたしは「言葉はどうですか?」と尋ねた。
(父はドグマチールの副作用でパーキンソニズムが出ていたのだ)
「ごく普通に話せてます」ということだったので、わたしは
「翌日受診させてください」と言い、「明日朝一で連れて行きます」と返事をもらった。
翌日11時頃、ホームから連絡があって、「脳神経外科にいるのですぐ来て欲しい」。
病院へ行くと、「くも膜下出血を起こしています」ということだった。
病院でケアマネさんが「昨日の夕食、結構こぼしてたんですよ、いつもはそんなじゃないのに」
と言っていた。
提携病院があるのだから、そこのドクターに指示を仰ぐべき場面だっただろう。
 
こんなひどいところだったのに、どうしてもっと早く何とかしなかったのかと、
今でも悔やまれるところだ。
姉の協力が全く得られなかったわたしは、週に3回片道2時間以上かけて父に面会に行き、
差し入れを食べさせ、寂しがらないように話をして元気づけていた。
帰宅後はネットで老健の情報を収集し、3か所に絞り込んで見学の予約をし、
面会に行かない日を使って見学に回った。
運転が下手なため、仙台へ車で行くことが出来ず、全部公共交通機関を使ったので、
大体が辺鄙な場所にある老健へは、一日1か所行くので精いっぱいだったのだ。
ようやくいい所を探し当て、そこへ入所させてもらえる目途も立った矢先の父の死だったのだが、
「あんな老人ホームにさえ入れなかったら・・・」という気持ちが今でも非常に強い。
年金生活者だった父から1か月に23万円ものお金をむしり取って、
あのあこぎな商売のやり方とは。
病院も病院だ、自宅へ戻れるほど回復してない父を放り出し、
あんな老人ホームを紹介するとは(たぶんホーム側からバックマージンがあるんだろう)。
 
とにかく。
父のような目に遭う人がこれ以上増えないよう、そして、悲しい思いをする家族が
これ以上増えないよう、この記事が誰かの役に立つことを祈る。