みかん
和歌山の知人からみかんが届いた。
開けてみなくちゃ、と思ったけれど、なかなか開ける勇気が出なかった。
とうさんがまだ実家で一人暮らししてた頃。
二日に一度実家へ行ってたわたしに、毎回買い物リストが送られてきていた。
そこに、しょっちゅう書かれていたのは、
「小さいチョコと、みかんをお願いします」だった。
実家へ行く前に仙台駅前の店でみかんを買った。
とうさんにみかんを渡すと、とうさんは早速一つ手に取ってむいて食べ、
「おっ、旨いみかんだ。あんたも一つ食べさい(=食べなさい)」とわたしにもくれた。
わたしが白い筋まで丁寧に取ってから食べ始める頃には、
とうさんはもう2個目を美味しそうに食べてたっけ。
勇気を出して箱を開けた。
いつものように、ちっちゃなお日さまみたいなみかんがぎっしり。
美味しそうなのを一つ選んで、とうさんの写真の前に供えた。
小さなチョコも3個一緒に。
「おとう、みかんだよ」と声をかけた途端、
泣き虫のわたしは、やっぱり泣いてしまったのだった。