まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

Aさん復活か?

わたしたちのボランティアは、「ゆるーく、たのしーく、ながーく、無理なーく」がモットー。
でも、こうなる前は「スティーブ・ジョブズ」の下でガシガシやっていた時期があった。
 
市民講座で一緒だったAさん。
ものすごいリーダー性とカリスマ性を持ったAさんは受講中から目立っていた。
積極的で、攻撃的で、ものすごく頭の回転が速い、白髪頭の60代の女性。
講座が終わる日、皆がひと言ずつ挨拶する中でAさんはこう言った。
「これで終わりにしてはいけない。
わたしたちは組織を作って、継続的にボランティアをしていかなかれば、
講座を受けっぱなしになってしまう。
わたしはその組織を立ち上げたいと考えています。」
そして、受講者30人の中からAさんがヘッドハンティングしたり、
自分から参加を申し出たりした12人で活動を始めた。
活動を始めるにあたってAさんはリーダーになり、
20代のBさんがサブリーダー、そしてなぜかわたしは書記に指名された。
それからがすごかった。
「専業主婦だった」と本人は言ってたがAさんは女社長か?!と思うような行動力と緻密さと大胆さで、
あっと言う間に活動の骨子を組み上げてしまった。
毎週一回に4時間から5時間の三役会議。
そこではほとんどAさんのトップダウンで、次々と新しい方針が出された。
ボランティア活動自体も、「新しい自分を見つけるための活動」とされ、
マンネリはいけない、毎回新しいことにチャレンジしてブレークスルーするように、
と毎回の反省会でAさんはメンバーに繰り返し繰り返し力説した。
「出来ない」「苦手だから」と尻込みすることは許されなかった。
わたしたちは毎回薄氷を踏むような気持ちでボランティア活動に臨んだ。
Aさんは「よくやったわ!」「素敵だったわ!」とメンバーをほめてはくれた。
しかし、一方でわたしたちメンバーは段々疲れて神経が磨り減ってしまった。
ボランティア活動がちょっと苦痛になった。
活動自体も、毎回毎回新しいことばかりやるので、
認知症が入ってるお年寄りたちは困惑することも多かった。
Aさんは毎回お年寄り相手に熱弁を振るい、
ものすごいマシンガントークで場を盛り上げようと頑張っていたが、
周りから見ると痛々しく浮いてしまってる感じがした。
 
そんなある日、Aさんは突然ボランティア活動を辞めたいと言い出した。
フルタイムで働くことになったからと。
同時にBさんも就職のため辞めると言い出した。
わたしたちは必死で慰留した。
Aさんが抜けたあとどうなるかとても不安だったから。
でも、結局5ヶ月活動したあとで、AさんとBさんは辞めてしまった。
 
そしてどうなったか。
すごくラクになったのだ。
わたしたちはリーダー制を廃止した。
良かったこと、改善した方が良かったと感じたこと、
和気あいあい、ワイワイガヤガヤ反省会で言い合って次の活動の方向を決める。
次の活動の進行係に当たった人がプログラムを作り、メールで知らせる。
みんなそれぞれ「得意技」を持っていて、それを中心に係が回ってくる。
薄氷を踏む思いをする必要がなくなり、みんな少しずつ自分の担当に自信が付いてきた。
自信が余裕につながり、お年寄りの反応を確かめながら活動することが可能になった。
そこから反省点が浮かび、徐々に改善され洗練されて、活動自体が安定してきた。
 
ところが・・・。
Aさんが復帰するかも、といううわさが浮上しているのだ。
なんでも、Aさんは来年3月末までの契約社員で、その後契約が更新されなければ
またボランティアグループに戻って来るつもりらしい。
うーん、微妙。
Aさんを今のわたしたちの活動にどうやって迎えるか。
かと言ってわたしたちの活動の創始者を無碍にするわけにもいかないし。
・・・スティーブ・ジョブズみたいだ。
ジョブズが戻ってきたあとのアップルみたいに、わたしたちは嵐のような新しいステージに
巻き込まれていくのだろうか。
それに耐えられないものは去るしかなくなるのだろうか・・・。