まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

オカメインコのおよめさん

我が家では2歳になるオスのオカメインコを飼っています。
ホワイトフェイス・パールパイド・レセッシブシルバーという何だか大層な種類の、
しかし見た目的にはほっぺのオカメマークが全然ない、地味~な色合いのオカメインコ
彼の名前はまる丸、通称まるぽん。
しかし、息子には「まるお」と呼ばれ、
娘からは「ヤキトリ」「ボラギノール」と散々な呼ばれよう。
 
なぜならまるぽんは、わたし専用のオカメインコになってしまってるのです。
・・・と言うよりは、まるぽん的には完全にわたしのおムコさん。
わたしは、まるぽんから見れば、オカメインコのおよめさん的扱いなのです。
 
呼び鳴きするのも、わたしに対してだけ。
手に乗れば、すぐにあやしくお尻をスリスリして交尾行動。
なでさせるのもわたしだけ。
子供たちに対しては、口を開けて威嚇し、手を出せば猛然と攻撃。
・・・もともと子供たちの情操教育にいいかと飼い始めたのに。
 
わたしとオカメインコとの出会いは今から30年以上前にさかのぼります。
姉とお年玉を出し合って小鳥を飼うことに決めたわたしたちは、
とある小鳥屋さんに行きました。
「オキナインコを飼いたいと思ってるんですけど。」
小鳥の本を読んで決めていた種類を告げると、
小鳥屋のおっちゃんはペットのリスザルを肩に乗せたまま、
「オキナは今いないけど、オカメなら沢山いるよ。見てみるかい?」と言い、
「ほーら、お客さんだよー。」と言いながらわらで編んだ入れ物のふたを開けたのです。
途端に冠羽が生えた頭がひょこひょこひょこ!
いるわ、いるわ、10羽ばかりのオカメのヒナヒナちゃんたちが頭を出しました。
思わず姉と顔を見合わせて「かわいいね!」
おっちゃんは「オカメは丈夫だし、飼いやすいからおすすめだよ。
まだこいつらはちっちゃくて渡せないから、1ヶ月経ったら売ってやる。
どれがいいか決めて帰って1ヶ月後にまたおいで。」と言いました。
わたしたちは、ふたが開いたときに真っ先に頭を出したイキのいい子に決めて、
ワクワクしながら1ヶ月後を待ちました。
連れて帰るとそのオカメインコは姉の膝に人懐こくよじ登り、
澄ました顔をしてよそゆきのスカートに糞をしました。
それが「ちーのすけ」との出会いでした。
 
以来24年にわたってちーのすけはわたしたちの友達でした。
本を読むとき、レコードを聴くとき、ピアノを弾くとき、
受験勉強してたとき、卒論に苦しんでたとき、
いつもいつもちーのすけが膝や肩に乗っかって羽繕いしていました。
わたしたちが結婚して家を出てしまうと、ちーのすけはカゴから出なくなりました。
実家へ帰る度、「また来るから元気でいるんだよ。」と声を掛けてたのに、
7年前の冬の日、バスの時間が迫っていたので声を掛けずに帰ってきたら、
ほどなくちーのすけは小さな星になってしまいました。
我が家にやって来て24年と10ヶ月経った寒い日のことでした。
 
まるぽんを初めてなでたとき、なんとも言えずに懐かしい感触に、
オカメが喜ぶ部分をなでてやったのが良くなかったのか、
それとも透明になっちゃったちーのすけが何やら入れ知恵したからなのか、
まるぽんは家に来てすぐからわたし専用オカメになってしまったのです。
 
今もパソコンを打つわたしの傍らでまるぽんは幸せそうに羽繕いしています。
ホントにお前はオカメインコなのかい?!と言いたくなっちゃうくらい鈍臭く、
心臓に毛が生えているようなまるぽんですが、やっぱりかわいい。
そして、もう一度ちーのすけに会いたい、といつも思います。