登場人物に共感・・・「ファミリー・ツリー」をみた。(ネタバレあり)
もうすぐ公開終了ということなので、「ファミリー・ツリー」をみてきた。
・・・いやあ、予想以上によかった。
わたしは、この映画大好き。
なんと言ってもジョージ・クルーニー演じるマット・キングがいい。
典型的な仕事人間だったマットには次々と難問が襲い掛かる。
奥さんにまかせっきりだった10歳と17歳の娘はそれぞれ問題行動ばかり。
そして7年後に信託が切れる広大な土地の処分問題。
奥さんは生命維持装置を外すことを事前に指示してたため、あと数日の命。
土地の処分について親戚一同が集まり投票を行うまで、あと6日。
そんな中、奥さんが浮気していたことを娘から聞いたマットは・・・。
あらすじをザックリまとめるとこんなところだろうか。
はじめのうちは、マットが家庭を顧みずに仕事ばかりだったため、
奥さんが浮気してしまい、子供たちが不安定になっていたのかと思った。
でも、映画をみているうちにこの映画はそういう単純な善悪を描いているのではないことに気付いた。
カメハメハ大王の直系の子孫で資産持ちのマット。
でも、彼は莫大な財産に手をつけることなく、弁護士としての収入だけで暮らしている。
そのことを奥さんはずっと不満に思っていた。
(そしていつも実の両親にこぼしていた。)
フランスの別荘、世界一周旅行・・・。
奥さんはそういうものに憧れていたし、その気になればそういうものを与えられる資産を持ちながら、
つましい(庶民から見れば結構贅沢だけど)生活を強要するマットを「ケチ」だと思っていたのだ。
奥さんは所謂「普通のひと」で、明るく、社交的で生活にスリルを求めていた。
ハデに友達と遊んだり、お酒を飲んだりするタイプの女性だったのだ。
対するマットは、なんというか・・・「品がいい」のだ。
奥さんの浮気相手に対しても、相手に幸せな家庭があり、妻を愛している男だと分かれば、
浮気相手の奥さんには何も気付かれないように心を配る。
(でも、人間だからね、帰り際に不審な行動を取っちゃうんだけど。)
「お前がケチだから娘はボートレースなんかに出た。
娘はいい子だったのに。」となじる奥さんの実父には黙って言わせておく。
(傲慢を絵に描いたように見える奥さんの実父が、脳死になった娘を優しく見舞っている姿を、
マットは戸の隙間からそっと見ていた。)
そして、娘が連れてきた一見どうしようもないおバカな青年シドにも、すごく寛大な態度で接する。
(まるで、昔の王様が道化をそばにおいていたみたいに。)
どうしようもない不良娘になり下がったかに見えていた長女のアレックスのことは
「大人」として扱い、難問を相談しながら一緒に解決していくことで立ち直らせる。
(そういう意図でやっていたかは別として、結果的に。)
そして、マットはなんだか可愛らしいのだ。
奥さんの浮気を初めて知ったとき、サンダルをつっかけて奥さんの親友の家へ駆けていく姿、
浮気相手のコテージを突き止めてこっそりのぞいてる姿、
そして浮気相手の奥さんにうっかり(わざとか?)キスしちゃう姿。
予想外の事態に直面して混乱しちゃうけれど、それを一つずつ娘と一緒に考え、
品位を持って解決していくマットの姿は、近年のアメリカ映画にはない人物像で、
わたし個人としてはとても共感できた。
先祖から受け継いだ広大な原野を、手付かずのまま残す、という選択にも大いに共感できたし。
何より物事を白か黒かに単純に分けてしまわないところがすごく良かった。
現実に生きているわたしたちは、日々そんなモヤモヤした気持ちの中でもがいてるわけだからね。
金太郎飴みたいにどこまで切っても善人とか、悪人とか、そんな現実味のない話には、
正直言ってうんざりしていたんだもの。
いつものようにこの映画を野球にたとえると・・・。
奇をてらうことなく素直に打ち返した球足が意外に伸びて2塁打!