まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

スカポンタン?!

一体何が悪かったのか。
 
親戚の男の子。
東京の某有名私大に入っていたのだけど、実は3年間不登校だったそうな。
130単位取らないと卒業出来ないのに、4年になる時点で取れてたのはたった5単位。
「4年で卒業できる見込みはありません」と大学から通知が来て初めて不登校が分かったとか。
その子はほとんどバイトもせず、学生会館の部屋にこもってPC三昧だったらしい。
そして3年間休みになるたびに帰省し、親に服を買ってもらったり、
外でご飯をご馳走してもらったり、何食わぬ顔で過ごしていたんだそうな。
 
優秀だと親戚の間でも評判の子だったのになあ。
おじいちゃん、おばあちゃんも自慢の孫だと言い、目に入れても痛くないほどの可愛がり方だったのに。
その子の両親も、おじいちゃん、おばあちゃんも、さぞかしショックだろう。
 
「1300万円、ムダになってしまって・・・。お父さんはもう定年だし、
卒業させるのにかかるお金のことを考えると絶望的な気持ちになります。
お父さんは『もう、この先何の楽しみもなくなってしまった』と言ってます。」と、
その子のお母さんからメールが届いた。
なんと返事をしたらよいのか、言葉が見つからなかった。
「うちの子があんなスカポンタンだったなんて。
思ってもみませんでした。」
そんな風にメールは結ばれていた。
 
スカポンタン?そうなのかなあ。
全部あの子が悪かったんだろうか。
わたしにはどうしてもそうは思えないのだ。
 
その子の両親も、おじいちゃん、おばあちゃんも、躾が厳しいので有名だった。
小さい頃からその子は、男の子なのに信じられないくらいおとなしくてお利口さんだった。
その子が小さかった頃、公園へ連れて行ったことがある。
滑り台やブランコが揃った大きな公園で、「さあ、何して遊ぶ?」とその子に尋ねたら、
「ぼくは何にもやりたくない。」と即答されてしまった。
「滑り台しようよ。面白いよ。」となだめて、滑り台へ続くはしごを上らせたら、
ちょっと足を滑らせてすねをちょっぴりぶつけてしまった。
途端にその子は大声で泣きわめき、
「○○ちゃん(わたしのこと)が無理にさせたからだ!
ぼくはやりたくないって言ったのに!○○ちゃんが悪いんだ!」と何度も繰り返した。
「ああ、ごめんね。痛くなっちゃった?
でも、滑り台面白そうだったから、滑らせてあげたいと思ったんだよ。」と優しく言ってもムダ。
「○○ちゃんのせいだ!痛いこと無理にさせた!」
家に連れて帰るまでずーっと言われ続けた。
家に帰ったらすぐおばあちゃんに言いつけた。
「滑り台させてやろうと思って、はしごを怖がったんですが、励まして上らせたんです。
そしたらちょっと足をぶつけたみたいで・・・。
全然あざとかにはなってないんですけど。ごめんなさい。」そう言ったら、
「その子はねえ、とてもおとなしくて臆病な子なんです。
嫌がったら、無理にさせないで欲しかったわ。」そうきつい口調で注意されてしまった。
その子の家を出て帰る道々、釈然としない思いでいっぱいだった。
 
その子は小さい頃から一事が万事、そんな風に育てられたのだろう。
蝶よ花よと甘やかされ、一方で大人の価値観に沿うようにたわめられ、
歪められて大人の考える「いい子」にさせられたのだろう。
そう言えば大きくなってからもやたらと人の顔色ばかり伺う子だった。
大人の機嫌を損ねないこと=善、大人の機嫌を損ねること=悪、
みたいな価値観でずっと生きてきたのが、
急に一人暮らしになったとき、自立も自律も出来ずに崩れてしまったのだろう。
それはその子が「スカポンタン」だからなんだろうか?
回りの大人の責任ではないのだろうか?
 
それにしても、優秀だといわれてた子が・・・。
他山の石としよう。