まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

今更ながら「ガタカ」をみた

ちょっと前、「しあわせの絵の具」という映画を
映画館で観てきました。
アール・ブリュット」(正式な美術教育を受けていない人が作り出す
芸術作品のこと。よく知られている例では「裸の大将」山下清など)を
扱っている作品で、芸術関係の勉強をしている子供を持つ身としては、
ちょっと微妙な気持ちにさせられる作品だったのですが。
その作品で、非常に久しぶりにイーサン・ホークを見ました。
「いまを生きる」に出てたちょっと気弱でひ弱そうな青年が、
なんだかごっつくて粗野な感じのおっちゃんになっていて、
「ひえ~」と驚いた訳でして。

そんな訳で昔のイーサン・ホークの映画が見たくなり、
ガタカ」を見ることにしました。
名前は聞いたことがありましたし、
カッコいいポスターも見たことがあったのに、
作品自体はこれまで見たことがなかったのです。
この映画は作られたのが1997年(公開は翌1998年)。
わたしは初めての子供が生まれたばかりで、
映画と縁遠くなっていた時期に作られた作品だったんですね。
なんと…もう20年以上前の作品!
しかし、まったく古さを感じさせないどころか、
「今見ておいて本当に良かった!」と心底思える作品でした。
(子供たちにも「ガタカ、見て!」とすぐにすすめました)

ガタカ」の原題は「GATTACA」、オープニングでも
出演者やスタッフの名前の中のG A T C の文字だけが
強調された形で表示されます。
わたしは「Great、Terrific、Awsome、Cosmic」の頭文字かと
思ったのですが(文系の発想ですな)、これは、
DNAの基本塩基の頭文字なのだそうで
wikipedia作品紹介による)。
この作品をざっくりと紹介すると、
「子供を持つ際に『デザイナーベビー』が常識になった近未来で、
両親の愛の結晶として生まれ、遺伝子的に劣った人間の烙印を
押された主人公ヴィンセントが宇宙飛行士になろうとする話」
ということになるとは思いますが…。

いやあ、この映画はすごいです。
まず、脚本が非常に上手いです。
伏線の張り方、その回収の仕方、
主人公をめぐる人々の心の奥に隠されたものの深さ…。
1時間46分の作品ですが、終始緊迫感が漂い、
だれる瞬間が全くありません。
また、映像も素晴らしいです。
メタリックな質感の硬質な映像も見事ですし、
近未来感と不思議なレトロ感とが共存する
作品全体を通しての世界観も本当にクールでスタイリッシュ。
フランク・ロイド・ライト設計の建物など、
ほぼ既存の建築物を使っているにも関わらず、
ここまで近未来感が出せるものかと驚嘆しました)
そして、役者が本当にいいです。
秘密を背負いつつ夢に向かって突き進む、
陰のある主人公を演じたイーサン・ホークも、
ちょっと「マレーネ・ディートリッヒ」を思わせる、
クールビューティのウマ・サーマンも、
人並外れた優れた遺伝子を持ちながら挫折し、
人生に絶望している(いた)男を演じるジュード・ロウも。
新下層階級(遺伝子的に劣った人々はこのレッテルを貼られ、
社会の最底辺で生きることを強いられる)の初老の男を
かのアーネスト・ボーグナインが演じているのも嬉しいところでした。
さらに、音楽も良かった!
(割と音楽でがっかりさせられる映画が多い)
「脚本、映像、役者、音楽」の4つが見事にそろった、
非常にいい作品だと感じました。

ネタバレになると困るので、中身に触れる感想は
別の記事にしようと思います。
この作品、高校生以上の方にオススメしたいです。
作品の中身まで考察しようと思ったら、
人生経験もかなり必要かもしれません。
SFにジャンル分けされる作品ではありますが、
大人の方ならどなたにもおすすめしたい秀作です。
是非ごらんください。