まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

(ネタバレあり)わたしたち全員がある意味「〇〇者」なのかも~映画「メッセージ」を見た

※どうしても映画の核心に触れてしまいますので、
作品未見の方はご注意ください。









(空白部分)






↓これより文章に入ります。

見終わってから、わたしは
SF映画に新たな地平を拓く作品」
という触れ込みはウソじゃなかったな、と思った。

SF映画と言うと、
「地球でひどい目に遭わされる」か
他の星でひどい目に遭わされる」か、
場所と襲って来る相手が違うだけで、
スクリーンいっぱいに人類の受難がこれでもか、これでもかと
素晴らしいVFXを駆使して描かれるのがお定まりになっている感がある。
でも、この作品は全く違った。
爆発シーンはある・・・1回だけ。
恐怖のあまり暴徒化した人々が世界各地で暴れまわる映像はある・・・
作品中でも「中継映像」の形だけど。
飛び交う光線も、ミサイルもない。
正体不明の「彼ら」が人類の危機を招いたようには見える
・・・でも、実は危機を招いている(いた)のは、
わたしたち人類の方だったけど。

「彼ら(ヘプタポッド=7本足)」が使った「武器」と言う言葉に、
世界中の男どもはお定まりの反応をする。
「こちらから武器を使ってヤツらをやっつけてやる!!!」
そういう反応の仕方こそが、今この時も
人類全体を危急存亡の危機に陥れていると言うのに。

それにしても。
結局人類を救い、誰も成しえなかった「世界融和」への道を拓いたのは、
女性言語学者であった。
彼女は「彼ら」との交流で得た「予知能力」と「言葉」とを使って
(ヘプタポッドはそれを「武器」と言ったのだ)、
人類を破滅の淵から引き戻すことに成功した。

でも・・・。
彼女にはこれから先自分の人生に起こる全てが
見えてしまうようになっていたのだ、
愛する者を次々失ってしまう悲しみに満ちた人生が。
それでも彼女は自分の人生を生きて行く。
やがて自分から離れて行くことが分かっている夫を深く愛し、
若くして亡くなってしまうことが分かっている娘を心から慈しみながら。

本当に難しい映画だったけど、
見終わってから何だか心の中に不思議な感動が広がるのを感じた。

・・・わたしたちも「予知能力」を持っているとは言えないだろうか?
わたしたちは、この作品の主人公であるルイーズみたいに、
「いつ、どこで、どうやって」こそ分からないけれど、
自分の命にも愛する者たちの命にも必ず終わりが来ることを知っている。
子供たちは成長し、自分たちは年老いて、
やがて全てに終わりが来ることを。

そう、あっちの国の人たちも、そっちの国の人たちも、
みんなそうなのだ。
いつかは終わりが来る命を生きている、そういう存在なのだ。
そして、わたしたちはみんな「予知能力」はなくても知っている、
こんなやり方をしていたら、自分たちの世界に早晩終わりが来てしまうことを。
それなのに、こんな小さな星の上を勝手に小さく区切って、
お互いに殺したり殺されたり、憎んだり憎まれたり。

「彼ら」は3000年後にわたしたちの助けを借りに来るそうな。
それまで地球が滅びてしまわないように、
わたしたちも彼らの言う「武器」を正しく使うべきなんじゃないだろうか・・・。

そんなことを考えさせられた作品だった。
爆発はないけれど、結構恐ろしい音が響く作品なので、
わたしのように「聴覚過敏」がある方はちょっと注意が必要かも。
でも、皆さんに是非見ていただきたいおススメ作品だと思う。