まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

うーん、みんなこう言うミュージカルが好きなのかなあ?~LA LA LANDを見た~

「往年の名作ミュージカルへの愛が溢れる新作ミュージカル」
という触れ込みの「LA LA LAND」を娘と見て来ました。
しかも、初IMAXシアターで。

ネタバレしてしまうため、映画の内容については触れません。
でも、見終わってからの娘の言葉は
「どうしてああいう終わり方をしなくちゃならなかったの?」
でした。
「途中までは良かったんだよ、とても。
色もとてもきれいな映画だったしね。
でも・・・あのエンディング、どうしてなの?」

娘は美大に進み、デザインの勉強をしようとしています。
まあ、デザインというものは、
ご自身は日本画専攻だったアトリエの先生ご夫妻に
「芸術ですらない分野」と言われているそうですが。
少なくとも芸術大学で教えられている一分野ではありますから、
うちの娘はこれから「芸術などという死に体になりかけのものを追求しようとしている夢追い人」の
仲間入りをしようとしている若人であると言えるのですね。

芸術を志す人たちが勇気をもらえそうな作品だと思ったこともあって、
受験前のこのタイミングで娘に見せたいと思ったのですが・・・。
これは、「人生の厳しさと苦さ」を突き付けてくる作品だったのです。
作品がエンディングを迎えた時、「一緒に見るべきじゃなかった・・・」と母は後悔しました。

わたしはわたしで、この作品をあまり高く評価出来ないなあ、と思いました。
わたしは洋画好きだった両親の影響もあり、
子供だった頃からいわゆる名作映画を数多く観て育ちました。
かつて作られたミュージカルの名作に比べると、この作品、
まず、楽曲に魅力がありません。
ミシェル・ルグランを思わせる音楽」との評も目にしましたが、
確かにアレンジの施し方、コーラスの使い方などに
「ルグラン風味」は感じたものの、楽曲自体はメロディーラインもコード進行も平凡で、
魅力的だとはあまり思えませんでした。
そして、主演二人の歌や踊りのスキル。
(まあシド・チャリースに関して言えば歌は吹き替えでしたが)
往年のスターたちのそれと比べてあまりにも見劣りするものでした。
・・・なぜ、あの二人が主演だったのでしょう。
「女優の卵」と「ジャズピアニスト」がものすごく上手く歌えたり、
ものすごく上手く踊れたりしたらリアリティが無いからなのでしょうか?

わたしは高校の頃からのジャズファンでもありますが、
「ジャズを取り上げた作品」として観ても、
この作品は消化不良になりそうな感じだと思いました。
ただし、「ジャズは最早死にかけの音楽だ」という痛烈なメッセージだけは、
悲しいけれど否定はできないと思いましたが・・・。

理想と現実の間で揺れ動くジャズメンの気持ちを描いた作品なら、
「ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」の方がずっとずっと優れた作品だと思います。
サウンドトラックの出来から言ってもそうですし、
「ジャズピアノを弾いているフリ」の上手さから言っても、
「ファビュラス~」のジェフ・ブリッジズの方が上だったと思います。

それに・・・。
わたしも娘と同じ気持ちです。
「なぜああいう終わり方をしなければならないの?」と悲しくなります。
現実社会が厳しいから?
リアリティが無ければみんなにそっぽ向かれるから?

「On the sunny side of the street」という曲があります。
邦題だと「明るい表通りで」という曲です。
これはかの世界恐慌の頃に作られた曲なのですが、
あんなにも世情が厳しい最中に作られたというのに、
歌詞も曲調もあくまでも前向きで明るいのです。
♪ポケットに1セントもなくったって、
気分はロックフェラーみたいに金持ちさ・・・

子供の頃、映画館は「夢にあふれた場所」でした。
サウンド・オブ・ミュージック」を小2で見た時、
「E.T」を高校の頃見た時、
そしてリバイバル上映の「雨に唄えば」を大学の頃見た時。
心の中がものすごい感動と幸福感とでいっぱいになったものです。

もう映画はそういう性質のものではなくなってしまったのでしょうか・・・。
ミュージカルまでもが・・・。

巷はこの作品を高く高く評価する声ばかりのようですが、
わたしは高く評価できません。
多分、わたしも娘も感覚が世間とずれているからなのでしょうね。