まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「この世界の片隅に」、今だからこそ全力でオススメします!!!

公開初日、最終上映で「この世界の片隅に」を娘と見て来ました。

原作を何度読んだか分からない!というわたしは、
上映前にハンカチとティッシュを膝の上に出しておきました。
きっと激しく泣いてしまうだろうと思ったからです。
でも・・・。
本編中はほとんど泣きませんでした。
原作を読んでいたから何が起こるのかは知っていたけれど、
登場人物たちが動き、笑い、話す力を手に入れたことによって、
愛すべき人々が日々精いっぱい暮らしているつつましい日常が無残に破壊されていく様が、
原作を読んだとき以上に重く激しく心に迫って来て、
「泣く」などという生ちょろい感情をふっ飛ばしてしまったかのようでした。

戦争って、こういうものなんだ。
頭の上から爆弾が降って来るって、こういうことなんだ。
愛する者の命をむざむざと奪われてしまうって、こういうことなんだ。
大切な人を失い、大切なものを失い、それでも人は立ち上がり、どうにかして生きていくものなんだ、
そして、どんなに悲惨な状況になったとしても、人が立ち直る力を持てるのは・・・。
立ち直る力を持てるのは・・・。

どうしてだと思いますか?

その「答え」がエンドクレジットの背景で流れます。
わたしはエンドクレジットを見ながら、落涙するのを止められませんでした。

原作ファンという立場で言えば、100点満点の作品だとは言い難いです。
尺の制限と「子供たちでも見られる作品に」という観点から、
遊郭のリンさんやテルちゃんとのエピソードを大幅に削った理由は分かるけれど、
リンさんはすずさんと表裏一体を為す非常に重要な人物だけに、
作品の奥行きがちょっと狭くなってしまったのは残念でした。
しかし、一方で原作の雰囲気を生かし切った映像と、
登場人物たちに生命を吹き込んだ声優陣、特にのんさんの素晴らしさは特筆に値します。
のんさんの声は、ちょっと芯がなくぼんやりとした感じで、
わたしが原作を読んで抱いていたすずさんの声の感じとは違っていたのですが、
そんなことはすぐに全く気にならなくなりました。
そして、映画の終盤、
すずさんがものすごい出来事に打ち砕かれそうになった場面でののんさんの声の演技のすごさに、
見ていて血の気がすーっと引いてしまうほどの衝撃を覚えました。
あまちゃん」の時は「とっても可愛いけれど、あまり上手な女優さんではないな」と思ってましたが、
のんさん・・・天才なのかもしれません。

普通の国」になるために、日本を再軍備させようとしている人がいます。
某国の次期大統領もそれを望みそうな感じです。
彼らはいい。
どんなに恐ろしい戦争になっても、彼らは最後まで逃げられる人たちです。
最後の最後まで守ってもらえる人たちです。
でも、わたしたち庶民はそうは行かない。
いったん戦争になったら、わたしたちを取り巻く世界の全てが破壊されて行くのです。
彼らにはそのことが全く分かっていない。
「分かっている」と口先では言うでしょうが、分かる気もないし分かろうともしない。
彼らにとってわたしたちは顔のない「もの」、数字でしかとらえることのない、
人的資源みたいなものに過ぎないからです。

わたしは、今も戦火の中にある人たちのことを思います。
戦争をする人たちは庶民の苦しみや悲しみなんか考えもせず、
自分たちの理論で人々の頭の上に爆弾を降らせ、
「こっちが正しい!」「何を言う、こっちこそ正しい!」を延々と繰り返すのです。
その爆弾の雨の下で人々がどんな恐ろしい目に遭っているかなど、
まるで気にかける様子もなく・・・。

わたしは、子供たちに平和で穏やかな未来を残してやりたい。
それは、先の戦争が無残な形で終結したあと、
焼け跡に生き残った無数の「すずさん」たちの、
共通の願いであったはずです。

だからこそ、わたしは、
この作品を今、全ての人たちに見て欲しいと思います。
是非、劇場へお運びくださるよう、お願いいたします。