まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

Sさんの笑顔

メンバーの都合が付かず、1回お休みしたので、
今日は1か月ぶりのボランティア活動日でした。
仕事が休みだったわたしも、もちろん参加しました。

今日は四月生まれの方のお誕生会もしました。
・・・まあ、全体活動の中の本当にささやかな「お誕生祝いコーナー」でして。
その月に生まれた方の名前をお呼びし、
状態のいい方に対してはちょっとした質問(「元気で長生きする秘訣は何ですか?」とか)をして、
あとはプレゼント曲として「四季の歌」をみんなで歌い、
「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」にその月生まれの方の名前を入れてみんなで歌う、
程度のミニミニお誕生会なのです。

「四月生まれの方~?」
進行役のKさんの呼びかけに答えはありませんでしたが、
職員さんが「Mさんが29日生まれです」。
そこで、いつものように「四季の歌」を歌い、
「ハッピー・バースデイ・ディア・Mさん!」とみんなで歌いました。
そして、次の紙芝居のコーナーに移ろう・・・としていた時、
別の職員さんが「Sさんも四月生まれです!」と言ったのです。

Sさんは数少ない男性利用者の一人。
いつも表情が無く、歌や軽体操などの活動にもほとんど参加しない方です。
わたしはキーボードで伴奏しながら利用者さんたちの様子を見ているのですが、
Sさんに関しては歌に合わせて口が動くこともなく、
「毎回職員さんに連れて来られてはいるものの、きっと楽しくないのだろうな」と思っていました。

そのSさんが四月生まれ。
でも、もう次のコーナーに移る雰囲気になっちゃったし、どうしようか・・・?と、
進行役のKさんから合図が来ましたが、わたしは「では、Sさんのためにもう一度歌いましょう!」
と言って、「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」の前奏を弾き始めました。
利用者さんたちが大きな声で歌い始めても、Sさんは無表情なままでした。
そこで伴奏しているわたし以外の3人のメンバーがSさんの前に移動すると、
傍らに付いていた職員さんがSさんの補聴器を着けた耳に向かって言いました。
「Sさん、四月生まれだから、みんながお祝いで歌ってくれてますよ!」
すると・・・。

今まで一度も見たことが無かったような笑顔が、
ぱあっとSさんの顔に浮かんだのです。
それは、まるで雲間から日光がまばゆく差したかのような、
明るい明るい笑顔でした。
「ああ、元気だった頃のSさんは、きっとこんな顔で笑う方だったのだな」
歯を見せて嬉しそうに笑い続けるSさんを見ながら、
わたしの心は感動でいっぱいになったのでした。

活動終了後のミーティングの時、みんながSさんの笑顔について話しました。
「Sさんがあんな顔で笑ってくれるなんて・・・」
「あんな笑顔が見られて、本当に幸せだった」
「幸せな気持ちを分けてもらえたよね!」
みんな興奮した口調でした。

ボランティア活動は、これだから止められないのですね。
素敵な仲間と、毎回貴重な体験をさせてもらっております。