まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

58歳のわたしからエールを送られた話

*まず、「栗ようかんの部屋」内「3歳のわたしを慰めに行った話」をお読みください。

45年を駆け戻って来た直後。
先生は「未来のあなたに、10年後のあなたがどうなってるのか
教えてもらいに行きましょう。
そして、10年前のあなたにアドバイスをもらいましょう」と言った。
わたしは、また先生に言われるがまま、
バタバタと足を動かして10年後に向かって駆け足する真似をしたが、
今回ばかりは内心(いくらなんでもこれってナンセンスでは?)と思っていた。
(だって、10年後なんて、もしかすると生きてるかどうかさえ分からないじゃない?)
「さあ、10年後に着きました。
夫さんがどんな様子か、まず聞いてみて」
「夫は相変わらずだそうです。
仕事でいつも忙しく、家にいる間はろくに話もせず、
好きなゲームをして、録りためた格闘技の番組を一人で見ているそうです」
「そう。それで、10年後のあなたは夫さんについて何て言ってる?」
「彼を変えることは結局出来ない、やるだけ無駄なんだから、
自分自身が変わるしかないの。
一人ぼっちで寂しく家に居てはダメになると思ったから、
外で働いて家の外に居場所を見付けることにした、だそうです」
「10年後、あなたを取り巻く状況がどんなふうか聞いてみて」
「子どもたちは自分の足でしっかり歩いているし、
自分自身も仕事をして充実した毎日を過ごしているから安心して、と言ってます」
「10年後のあなたから、10年前のあなたに何かアドバイスがあるか聞いてみて」
「いろいろ心配なこともあるだろうけど、大丈夫、10年後のあなたは幸せになってるから。
とにかく、考え続けて。
絶望しそうになったりしても、考えることを止めずに最良と思える道を歩き続けて。
そうすれば、きっと大丈夫だから、と言ってます」
「表情はどう?10年後のあなたはアドバイスしながらどんな様子?」
「穏やかな表情でニコニコしてます」
「じゃあ、そろそろ10年前に戻りましょう。
さあ、また走って戻りますよ」
そして、わたしはまたバタバタと足を動かして「現在」へ戻った。
「・・・どう?」
「うーん・・・ちょっとだまされたような気持ち」
「誰もだましてなんかいないわよ。
さっきの言葉、誰が言わせたものでもない、10年後のあなたから出た言葉ですもん」
「でも・・・なんか釈然としない感じ・・・だって、何て言ったらいいか・・・」
と言いながら言葉を探していたとき、
不意にわたしの心に考えが浮かんで来た。
(そうか、10年後のわたしに会う、というのはある種のレトリックなんだ。
わたしの意識の奥深くで、現状を分析して、そこから最善の道を取るためにどうしたらいいか、
もうアイディアは生まれていたんだ。
それを「10年後の自分からのアドバイス」という形で、先生が引き出したんだ)
その途端、まるで使ってなかった回線に電気が流れるように、
これから先、自分がどうしたらいいのかが見えた。
「わたし・・・漠然とだったんですけど・・・保育士の資格を取ろうかと思ってたんです。
知り合いが幼稚園の副園長で、その方に来年春から認定こども園に移行するから、
もし良かったらお手伝いしてくれない?と誘って頂いたのに、
わたしは小中高の教員免許しか持ってないのでお断りするしかなくて。
ハローワークで仕事を探した時にも、保育士の資格さえあれば・・・という仕事がとても多かったので。
娘もあと1年半で家を出てしまいますし、保育士の資格があれば、
夫の転勤先でも必ず仕事が見つかると思うんです」
「見えたわね!
あなたは、自分がお母さんにされたような育て方をしたくない、
とにかく『いい母親』になりたいと思ってずっと頑張って来たでしょ?
それを、自分の子ども以外にも広げて生きて行きたい、
それがあなたの『幸せにつながる生き方』だと、あなたの中で答えが出てたのね!
ようやく、自分が自分の人生の主人公になる時が来たの。
あなたの人生は、誰のものでもない、あなた自身のもの。
『わたしは、わたしの人生を生きていきます。』って宣言して。
お母さんや夫さんに向かって宣言するように、はっきりと力強く言って」
「わたしは・・・わたしの人生を・・・生きていき・・・ます・・・」
「ダメ!そんなヒョロヒョロした言い方!もっとちゃんと力強く言って」
「わたしは、わたしの人生を生きていきます」
「もっと大きな声ではっきりと!」
「わたしは、わたしの人生を、生きていきます!」
「そう!あなたは、あなたの人生の主人公として生きて行くの!
なぜなら、あなたの人生はあなた自身のものだから!
誰かの顔色を伺ったり、誰かの犠牲になるための人生ではないから!」
・・・と言うような会話を繰り返して、久しぶりのカンセリングは終了したのだった。

それでもさらに数日迷い、資料をもらったまま放置していた「保育士合格講座」に、
昨日ようやく受講の申し込みをした。
保育士の国家試験の合格率はたった15%前後だそうで、
脳みそがいい加減溶けかけちゃってるわたしが受けて受かる見込みはごく小さいかも。
でも、頑張って勉強して、受かろうと思う。

思ってもみなかった方向へ、わたしの人生が動き出した。
流行りそうな言葉を使えば、まさしく「びっくりポン」である。