まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

根拠のない自信と真っ直ぐな正義感と~キックアスをみた~

久しぶりに夫と二人で土曜の午後を過ごした。
DVDでも借りて見ようということになり、
夫の希望で「KickAss」を借りてみた。
 
見終わっての夫の感想は、
「・・・何とも言えない映画だったなあ。
激烈だったね、いろんな意味で」。
確かに激烈だった。
下ネタも、殺戮シーンも、とにかく容赦なくて過激。
 
でも、わたしは、大げさに言うと
アメリカという国が持っている強さの秘密」
みたいなものの一端を見た気がした。
主人公のデイブは女子にもモテないごく普通の高校生で、
頭がすごくいい訳でもなくスポーツが出来る訳でもなく、
マッチョな身体の持ち主でも何でもないというのに、
通販で手に入れたウエットスーツを着込んで自ら「キックアス」と名乗ってヒーロー活動を始める。
準備と言えば、通販でウエットスーツを買ったことだけ。
それだけで、「自分はヒーロー」って気持ちになれてしまうのだ。
彼を突き動かすものは、根拠のない自信と真っ直ぐな正義感だけ。
外へ出た彼は、車上荒らししようとしてたチンピラ二人組を止めようとする。
しかし、あっさり二人組にボコボコにされて腹をナイフで刺され、
倒れていたところを運悪く車にはねられてしまい、瀕死の重傷を負う。
どうにか一命は取り留めたものの、身体中の痛みを感じる神経は麻痺し、
全身にボルトが入った状態になってしまったデイブ。
しかし、彼がすごいのはここから。
デイブは退院後すぐまたウエットスーツを着込み、
「キックアスVer.2だ!」と言って町へ出るのだ。
集団にボコボコにされていた青年を孤軍奮闘助けようとしていた姿が
(と言うより、再びボコボコにされたのだが、神経が麻痺しているため、
デイブはどれだけ暴力を振るわれても痛みを感じなくなったのだ。
そのため、やられてもやられても、必死で抵抗を続けられるようになった)
目撃者によって撮影されてネットに投稿され、一躍人気者に。
 
・・・まあ、この映画で有名なのはデイブではなく、
もう一組登場するビッグダディとその娘ヒットガールの方なのだろうが、
わたしはそんなデイブの姿に何だか感じ入ってしまったのだった。
 
アメリカ、と聞くと、よろしくないものも沢山存在している(いた)国、というイメージがある。
先住民であるネイティブアメリカンを虐殺した歴史があり、
奴隷制度があり、奴隷制度が廃止された後も人種差別が続いた歴史があり(今も残っているが)、
麻薬や銃に関する犯罪も多い国だ。
でも、感心するのは、そういうことに関して、自分の危険を顧みず、
「NO!」と立ち上がる人々が必ずいるということ。
この映画で腹を刺され、車でひかれてもデイブがキックアスであり続けたように、
そういう人たちは自分がどんなにひどい目に遭ったとしても、自説を曲げることなく
正しくあろうとし続ける。
その人たちが反対勢力によって粛清されてしまったとしても、
その遺志を継いで後に続く人たちが必ず現れる。
 
まあ、自己中心的だとか、やり方が強引だとかいろいろ批判はあっても、
アメリカという国に自浄機能みたいなものがきちんと働くのは、
そういう人々が存在しているからなのだろう。
そして、そう言う人たちは、決してスーパーヒーローなどではなく、
冴えない高校生のデイブみたいなごく普通の一般の人たちなのだ。
それこそが、アメリカという国の持つ底力の秘密なのではないだろうか。