まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

オカメインコの「ちいのすけ」のこと

現在飼っている「まるぽん」(オス3歳半)は、
わたしが飼った3羽目のオカメインコでして。
ノーマルオカメの「ちいのすけ」を飼ったのは、今からもう35年も前、
わたしが中学1年の春でした。
「オキナインコ」を飼うはずが、小鳥屋のおじさんにすすめられて、
オカメインコ」のヒナを飼うことにしたのです。
 
「ちいのすけ」を飼って衝撃的だったのは、
「鳥なのに、足をものすごく上手に使う」ということでした。
りんごを切ったのをあげれば足で上手に持って食べ、
小さくなって持ち辛くなれば、ちゃんと持ち替えて食べる。
「出してくれよ~」という感じで猛烈にアピールしても、
誰もカゴから出してくれなければ、自分で自分の頭をカキカキして、
気持ち良くなり過ぎてあくびを連発する。
犬や猫が足で頭や体を掻くのとは全然次元が違う、
デリケートそのものの動きに感嘆したものです。
それと、ものすごく好奇心が強いことにも驚きました。
こたつ布団がちょっとめくれているところなんかがあると、
「げげっ、げげげっ」と聞こえる「面白いものを見つけてワクワクしちゃってる時の声」を出しながら、
こわごわ頭を突っ込んでみるんですね。
でも、「上から布団が崩れて来たら怖いなあ」と思ってるから、
ちょっと腰が引けている。
それが、なんとも言えずに可愛らしくて、面白くて・・・。
「のすけ、大変だ、山崩れだ~」なんて言いながら、退路を断ったりするともう大変。
こたつ布団の中から、「ちーちゃん!ちーちゃん!」と必死で呼ぶんです。
ちょっと経ってから出口を開けてやると、「もう!大変な目に遭っちゃった!」
と言わんばかりの様子で転がり出て来るのですが、
またちょっとすると、同じところをのぞきに行って、こちらをちらちら見ながら、
「げげっ、げげげっ」とワクワクしている。
「ねえ、さっきの面白かったよお。またやろうよお。」と誘っているんですね。
それから、人間の言葉をとてもよく理解しているのにも驚かされました。
のすけがカゴに入っている時に、「ホントに美味しいものばっかり欲しがって、
いやしんぼオカメなんだから、のすけって」などと悪口を言ったとしますよね。
言ったこちらはすっかり忘れてしまっていて、しばらく経ってのすけをカゴから出してやったとします。
すると、いつもは本当にのそのそしているのすけが、そういう時に限ってササッと肩に乗って来るんです。
「あれ、どうしたの、のすけ?」と言う間もなく、
くちびるに「ガプッ」と咬みついて、あとはすたこらさっさとカゴに戻って行く。
「悪口言ったな!」と怒ってたんですね。
褒め言葉みたいな口調でわざと悪口を言ってみたり、いろいろ試してみたんですが、
のすけはだまされることなく、悪口を言われた時にはしっかり仕返しに来てました。
あれには、本当に驚かされましたね。
そして、こちらの気持ちを本当によく読む。
かあさんに怒られたり、学校でいじめられたりして悲しい気持ちのとき、
のすけは何時間でも膝や肩におとなしく乗って「大丈夫かい?オーラ」を出してくれました。
 
ちいのすけは、結局24年生きました。
心を許していたねえさんもわたしもお嫁に行ってしまって、
最後の10年ほど、のすけは悲しくて「引きこもりオカメ」になりました。
毎回わたしが実家へ帰ると嬉しそうにはするけれど、カゴの戸を開けても決して出て来なくなったのです。
わたしは、いつものすけのカゴのそばで、のすけにいろんな話をしてやり、
帰る前には必ず「また来るからね。それまで、元気にしてるんだよ」と声を掛けていました。
それが、たった1度だけ、帰りのバスの時間が迫ってしまっていて、うっかり声を掛け忘れてしまったのです。
「のすけ、死んだから」とかあさんから電話があったのは、
それからほんの1週間後のことでした。
 
今から4年ちょっと前。
この町へ越して来て落ち着いた頃に、ノーマルオカメの「たんぽぽ」をお迎えしました。
「たんぽぽ」は本当に賢い子で、うちへ来てほんの半月ほどでいくつも言葉を覚えました。
とても可愛がっていたのですが・・・。
ある夜、不思議な夢を見たのです。
いつものようにたんぽぽを肩に乗せて遊んでやっていると、
たんぽぽのカゴに上にちいのすけが居て、怒った様子でこちらを見ています。
・・・と、ちいのすけがバサバサと飛び移って来て、たんぽぽを追い払い、
わたしの肩に止まるという夢でした。
お迎えの時にちゃんと病院で診てもらい、異常がなかったはずのたんぽぽが突然元気を失くし、
病院での手当ても空しく死んだのは、それからほどなく、我が家へ来て3週間目のことでした。
のすけは、とても嫉妬心の強いヤツでしたから、
自分とそっくりな外見をしたオカメインコが可愛がられている様子に我慢がならなかったのかもしれません。
 
そんな訳で、今飼っている「まるぽん」は、一見オカメインコには見えない、
ホワイトフェイスなのです。
今回ばかりは、さすがののすけもオカメと見破れなかったのか、
それとも「たんぽぽ」と違ってそんなには賢くないぽんちゃんの様子に安堵したからなのか、
夢に出て来ることもなく3年が経過しました。
ライバルである中3の娘に「むげたん(無芸大食、という意味の愛称)」と呼ばれているまるぽんは、
今日も元気いっぱい、餌をガツガツと喰らっております。