まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

懐かしい感じ

今日はボランティア活動の日だった。
認知症の軽い入所者と通所の方々、合わせて25名くらいのお年寄りと、
一緒に歌ったり、軽体操をしたりした。
 
その後、傾聴をしに食堂へ。
今日、お話したのはGさんという男性だった。
「こんにちは、Gさん。今日の歌の活動はいかがでしたか?」
「・・・うん?」
「今日の歌は、どうでしたか?」
「・・・うん?何だ?」
「今日の歌、どうでしたか?」
「ああ、歌か。楽しかったよ。」
そう言ってGさんは破顔一笑、素敵な笑顔を見せてくれた。
 
その途端、不思議な懐かしさに襲われそうになった。
その気持ちを無理やり心のかたすみに押し込めて、
わたしはGさんと楽しくお話した。
若かった頃、素人楽団でアコーディオンを弾いていたこと、
仲間はバンジョーやギターを演奏したこと、
物がなかったので、大工の腕を生かしてバンジョーもギターも手作りしたこと、
神社のお祭りで演奏すると、飛び入りでのど自慢が次々歌って楽しかったこと・・・。
いつもテレビの前の席でひとりポツンとしているGさんが、
本当に楽しそうに昔のことを沢山話してくれた。
Gさんはもう86歳だけれど、歯も自分の歯だし、かくしゃくとして本当に元気そうだった。
「Gさんって、本当にお元気だし、お若いですね。」
そう言ったら、Gさんは本当に嬉しそうに
「そうかあ、若く見えるのかあ」と笑った。
その言葉を聞いたら、押さえつけてる気持ちが暴走しそうになったので、
わたしはまた心を無にして懐かしさを押し込めた。
 
帰り道。
Gさんのことを思い出したら、涙がこぼれた。
Gさんは、亡くなった父と良く似ていたのだった。
ちょっと耳が遠くなっているところも、
白髪頭も、背格好も、わたしに向けられた人の好さそうな笑顔も、
みんなに「お若いですね」って言われて喜ぶ表情も
本当に何もかも。
 
もう会うことが叶わなくなってしまった父のことを思って、
わたしはしばらく泣いてしまったのだった。