まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

震災後2年、何が起こっているんだろう。

わたしが今住んでいるのは、
日本中の誰もが「田舎」として認識している町。
4年ほど前に東京から越してきた時、
ここは「野生の王国」状態だった。
木々の枝、金網、電線、軒先、
その他ありとあらゆる場所にクモが巣を張っていた。
うちのベランダとて例外ではなく、
一晩のうちに物干しざおに立派な巣を張られることもしばしば。
毎朝出勤前の夫に「見回り」をしてもらわないと、
安心して洗濯物も干せない状態だった。
アパートの庭の花には大きなハチやらチョウチョやらが群れ、
ごみ置き場には肥ったハエがブンブンしていた。
 
それが、震災後様子が一変した。
まず、クモが激減した。
特に黒と黄色の縞々の大きなクモ。
震災前にはそこここで見られたものが、
近所の庭などでも全く見なくなった。
トンボやチョウチョ、ハチなども震災前の
10分の1以下になったように感じた。
そして、昆虫がいなくなったためか、
鳥の声を聞くことも少なくなった。
震災前は夏になると響いていたカッコウの声も、
ウグイスのさえずりも聞かれなくなった。
ここは一応被災地からほど近いし、
余震などのためなのかと思っていた。
 
そして、今年の夏。
昨年以上に昆虫の数が減っているように感じる。
チョウチョも飛ばない。
ガもクモもハエすらも見ない。
昨年は川の近くに立っていた蚊柱も、
今年はさっぱりだ。
そして、時折大きなハチやクモが死んでいるのを見かける。
以前はとんと見たことがなかったカラスの死骸も何度か見た。
そして、こんな田舎なのにツバメが飛ぶのを全く見ていない。
 
・・・なんだろう。
一体全体、何が起こっているんだろう。
ここは原発からおよそ100キロ圏内にある。
福島の人々はここが安心だと思ったらしく、
子供を連れた女性がまだこの町に多くとどまっているようだ。
「福島では怖くて外で遊ばせられないけれど、
ここでなら安心して外遊びさせられる」と笑顔でインタビューに答える様子を、
何度もローカルニュースで見ている。
でも、そうなんだろうか。
本当にここは安全なんだろうか。
 
人間は自分の知っていることしか知らない。
自分たちに計れるものしか計れない。
知らないことは知らないままだし、
計れないものは計る術を知らないままだ。
知らないし計れないものは、
「あること」にすら気づかないままだろう。
 
人間が存在に気づきもしない「何か」に、
小さな生き物たちは敏感に反応しているのではないだろうか?
この田舎町で毎日暮らしながら、
わたしはそう感じている。