大津市いじめ自殺事件について元小学校講師より。
大津市のいじめ自殺事件。
複数の教師がいじめの事実を把握していたらしいとマスコミが騒ぎ立てている。
「いじめの事実を知りながら手をこまねいていた教師」を演出したいんだろう。
でもね・・・。
教師って無力な存在なんだよ。
教師を無力にしたのは一体誰なんだい?と世間に問いたい。
わたしはかつて小学校で教えたことがある。
たった1年間だけ。
新卒で6年生の担任を持たされて。
その1年間の経験で、教師がいかに無力な存在であるかを思い知った。
わたしのクラスでもいじめがあった。
転校生のAくん。
転校してきてすぐいじめられ始めたのを知って、
すぐにいじめる側を一人ずつ呼んで指導した。
Aくん側にもいじめを誘発する要素(着衣や頭髪などが不潔、食べ方のマナーが非常に悪い等)があったので、
Aくんの保護者にいじめの事実を伝えたあとで、そういったことに気を配ってくれるように頼んだ。
そして、近頃のいじめは目に付かないように行われることが多いから、
お風呂の際などに傷やあざ等がないか、変わったことがないか家庭で見守って欲しいこと、
何か気になることがあったらすぐ連絡して欲しいことなどを伝えた。
Aくんに対するいじめは一旦沈静化したかに見えた。
Aくんはクラスの中でも問題行動の多い男子のグループの、
「パシリ」のような立場に自ら落ち着いたようだった。
他にもおとなしい男子のグループが複数あったものの、
Aくんはそういった子たちとは付き合わず、進んで「パシリ」のようなことをしているようだった。
他のグループに入ったらどうかと勧めたことも何度もある。
でも、Aくんは「あいつらといると楽しいから」と言い、
グループのリーダーでちょっと乱暴なBくんの腰巾着みたいなことをやっていた。
そうやって2学期も半ばまでいったときだった。
「先生、Aくん、Bくんたちにお金取られてるらしいです。
それに、朝の職員会議の時間、先生たちが誰もいないときを狙って、
クラスの男子が列を作ってAくんに順番でボールをぶつけてます。」
勇気を出して女子が知らせてくれた。
目の前が真っ暗になった。
すぐAくんやBくんグループのメンバー、他の男子などを一人ずつ呼んで聞き取り調査した。
すると、女子が知らせてくれたことは全て本当だった。
朝の職員会議の時間、クラスの男子のほとんどがAくんにボールをぶつけていた。
Bくんグループの子以外の男子もほとんど全部。
「だって、やらないって言ったら俺までいじめられるから。」
男子は口をそろえてそう言った。
そして、AくんはBくんたちに要らなくなったミニ四駆のパーツなどを売りつけられていた。
総額は3000円以上。
1ヶ月に300円しかお小遣いをもらってないAくんにとっては大金だった。
学年主任や教務主任、教頭などとも相談して、Aくんグループの保護者を集めた。
すると、教師側が口を開く前にBくんの父親が立ち上がって発言した。
「うちの子供たちを犯人扱いするのはやめてもらいたい。
学校は警察じゃないんだから、捜査の真似事みたいに聞き取り調査とか、やめるべきだ。」
他の保護者も次々に同じ趣旨のことを言い立てた。
「Aくんが欲しいって言ったから売っただけなのに、まるで犯人みたいに言われて、
うちの子は傷付いてます。
一体どうしてくれるんですか!」
Aくんに身体的な暴力も加えていたことを伝えても、
「だって、クラスの男子ほとんど全部がやってたんでしょう?
悪いのはうちの子たちだけじゃないってことですよね?」
ああ言えばこう言う。
決して自分たちの子供の非を認めようとはしない親がほとんどだった。
Aくんの保護者も呼んで事実を伝え、謝罪した。
するとAくんの母親はこう言ったのだ。
「こういうことになりそうなら、もっと早くに言ってもらいたかった。
そうすれば家でももっと気を付けましたのに。」
・・・4月の時点でちゃんと注意して見守ってくださいって話したじゃないか。
・・・着衣や頭髪、食事のマナーについても気を配ってくださいとも。
・・・それでも、着衣も頭髪もマナーも全く改善されなかったじゃない。
・・・あなたばっかりステキな服を着て。
・・・一体あなたは家で子供のどこをみてたのか。
そう言いたかった。
でも、「とにかく『ご無理ごもっとも』で平謝りするように。
こちらが何か指摘したりしたら、話がこじれて面倒なことになるから。」
と事前に校長から厳重に注意されていたので、黙って言われるがままになってるしかなかった。
「いやいや、子供たちは本当にやんちゃで。
今回は少しばかりやり過ぎましたな。はっはっは。」
校長がおどけた風に言った。
それがAくんの親の怒りに油を注ぐこととなった。
「第一、あなたみたいな経験のない、未熟な女性の受け持ちになった時点で、
これはハズレだな、とは思ってたんです。
でも、こんなにもひどいとは。
あなたは、一応教育のプロなんでしょう?
まあ、プロなんて呼べる代物じゃないってことは、よくわかりましたけど。」
わたしはわたしなりに、ベストを尽くしたのに。
わたし自身がいじめられた経験から、
Aくんは絶対このままならいじめの対象になる、と早くから分かっててちゃんと注意を促したのに。
いじめる側の子供の保護者。
いじめられた側の子供の保護者。
みんなエゴむき出しで、自分や自分の子供に落ち度があったのでは?などと謙虚に考えてみようともしない。
どちらも学校を非難するばかり。
教師側から見ればどちらも「保護者さま」で、
機嫌を損ねれば「教育委員会に言いますから」「知り合いの議員さんに話しますから」。
マスコミはいつも何か起こるたびに学校の責任、教師の責任と言う。
でも、子供たちにいじめを容認させる土壌をつくっているものが一体何なのか、
そこのところを直視しなければいじめの問題は決してなくならない。
学校側にも問題は沢山あるのは事実だ。
(うちのボケ校長みたいなヤツが実は校長会の実力者だったり、とかね。)
しかし、家庭教育のあり方、親子の関係、夫婦の関係など、
家庭にも大きな原因があることをマスコミはもっと強く訴えるべきだとわたしは思う。