まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

坂道のアポロンが好き!

坂道のアポロン」を子供たちとみている。
もともとわたしは30年来のBILL EVANSファンで、
ビルさまのCDを買いに行ったタワーレコードの情報誌から「坂道のアポロン」を知った。
その頃出ていた分を全部オトナ買い。
一気に読んで、じーんと来ちゃったり、ハラハラしたり、わんわん号泣しちゃったり。
 
小玉ユキさんは、ビルさまのファンなのだろうと思う。
・・・いや、きっとビルさまを強く強く愛しておられる方なのだと思う。
(わたしもそうだから、よく分かるのです!)
主人公の薫くんは、見た目だけでなく、性格もビルさまによく似ている。
内向的で、内省的で、人と打ち解けず、でも、本当は繊細でものすごく優しく、誰よりも傷付きやすい。
わたしは、この作品を読んでいるうちに、ビルさまと薫くんが重なって見えてきて仕方がなかった。
だから、もしかして薫くんは、最後に幸せになれないのではないかと・・・。
ビルさまの最期が「ゆっくりとした自殺」と呼ばれる悲惨なものだったように。
 
でも、小玉ユキさんはそんなむごいことはなさらなかった。
薫くんは最後に本当に幸せになれるのだ。
律っちゃんも、千太郎も、淳にいも、百合香さんも、みんな、みんな。
坂道のアポロン」の単行本巻末に掲載されていた短編や、
「光の海」「羽衣ミシン」などの作品から感じたことだけれど、
小玉ユキさんって、きっとものすごく優しい方なのだと思う。
最終巻を読み終わって、わたしは、まるでビルさまがもう一つの人生で、
幸せになれたような気がして、嬉しくてたまらなかった。
 
アニメ版は、やはり動く映像と音楽の力も相まって、感動がひとしおだ。
特にセッションのシーン!
わたしはピアノを弾くのだけれど、本当に動きや指使いがリアルなのに驚かされる。
千太郎のドラムも、また然り。
実際にミュージシャンに演奏してもらってるところを多方面から別アングルで映像にし、
それをアニメーションにしてるらしい。
もう、すごい!としかいいようがない。
菅野よう子さんの音楽も素晴らしいし、ジャズファンも納得の出来栄えに脱帽!である。
それから、個人的に、律っちゃんの可愛らしさが一層引き立ってる気がする。
(律っちゃんみたいな女の子、昔は学年に一人くらいいたよね。
優しくて、面倒見がよくて、そこそこ成績もいい、しっかり者の女の子。
今では、レッドデータブック入りらしい。
子供たち曰く、「律っちゃんみたいな子が今いたら、真っ先にいじめられるよ」って。
実に嘆かわしいことだと思う。)
そうそう、松岡くんの気持ち悪さが、もう暴力的なほどだった。
クリスマス・パーティーの場面で「バンバンバン」を歌って踊るところなんか、
見てる方が気持ち悪いやら、恥ずかしいやらで、どうにかなりそうなほど・・・。
 
アニメ版もあと1回を残すだけになったけど、
わたしには、どうしても分からない部分があり・・・。
アニメ版だと第9話の後半、律っちゃんが千太郎に
「鈍感な子にはもう一生教えてやらんもん」と言う場面があるけれど、
あの言葉の意味が原作を読んだときから、どうも今ひとつ分からない。
わたしの解釈は、こう。
千太郎本人から直接、律子は千太郎が自分に抱いているのは家族に対するような好意であって、
恋心ではないと聞かされたので、そう直接聞かされたのが、
千太郎に恋心を抱いていた頃の自分でなくて良かった、と言う意味で言った。
子供たちは別の解釈だと言う。
千太郎が自分のことを家族のように好きでいてくれると少し前の自分が聞かされていたら、
きっと千太郎への恋心を断ち切ることができず、
薫を好きになれなかったにちがいないから、
あの頃の自分じゃなくて良かった、と言ったのだろうと。
うーん、子供たちの解釈の方が正解のような気もする。
わたしって、鈍感な子(実際はおばさんだけど)なのかも。
うわーん。