まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

ツンデレAちゃん

Aちゃんは年長クラスの女の子。
可愛い顔のはずなのに、いつも人を睨み付けるような怖い表情をし、
二言目には「バカ!」と言う。
時にはグーでボカボカと人を殴りつける。
とても頭が切れる子で、年長クラスでAちゃんの頭の良さに付いていけるのは
Bちゃんだけ、あとの子たちは簡単に言い負かされてしまう。

わたしもしょっちゅう「バカ!」と言われ、時にグーパンチを喰らっていた。

この間、とうとうAちゃんに平手打ちされた。
そこまですごい勢いではなかったけれど、わたしにとっては
生まれてから2度目(1度目は小学校4年の時担任から)の「ビンタ」だった。
さすがに驚いたし(隣りにいたBちゃんの目もまん丸になった)、
「これはどうにかしなければ…」と思った。

延長保育の時間が終わりに近付くと、「お片付けタイム」がある。
ブロックやらお絵かきのテーブルやら工作道具やらを片付け、
絵本の読み聞かせなどをしながら親のお迎えを待たせるためだ。
でも、実際に一生懸命片付けるのは先生方だけ。
どんなに声掛けしてもお子たちは散らかしっぱなしで追いかけっこに興じるばかり、
ほぼお片付けはしないのが当たり前になっている。

昨日もその「お片付けタイム」になった。
いつものように「お片付けしようね!」と声掛けしながらブロックを片付けていたら、
怖い顔をしたAちゃんがすぐそばへ来た。
そして、手を腰に当てた威張ったポーズで、
「先生、あたし一人で、あんなに絵本片付けたんだけど!」と言った。
絵本の棚を見てみると、さっきまでグチャグチャだったのがウソのよう、
きれいにビシッと絵本が揃えられ、整頓されていた。
思わず、「わあ、Aちゃん、ありがとう!とっても嬉しい!」と言って
ムギュ~っとハグしたら、Aちゃんは顔中クシャクシャにして嬉しそうに笑った。

そのあと、部屋中に散乱しているブロックを這いずり回りながら拾い集めていたら、
またAちゃんが怖い顔をしてそばに来た。
今度はBちゃんも一緒だった。
そして、二人で「あたしたち、二人でゴミも拾ったんですけど!」と言ったので、
「えらいえらい、二人ともありがとう、とっても嬉しい!」と最初にAちゃん、
次にBちゃんをムギュ~っとしてほっぺをくっ付けたら、
嬉しそうに「えへへへ」と笑いながら走って行ってしまった。

Aちゃんはママに「バカ!」と怒られるんじゃなくて、
「大好きよ」と言われたいんだろうな。
でも、きっとママの頭の中はこれから生まれて来る2番目の子供のことや、
産後の仕事のこと、お金のことなどで一杯なんだろうな、
そうするとついついAちゃんにきつく接してしまうんだろうな…。

「A、早く、帰るわよ」
臨月間近のお腹をして、いつもの怖い顔でお迎えに来たママを見ながら、
そんなことを考えてしまったのだった。