まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

重なる

福祉関係の仕事をしている若い男性と
時々一緒に働いています。
その方は言葉がちょっと足らないことが多いけれど、
担当している方たちのためにいつも一生懸命です。

わたしがキーボードを弾くのを知って、
大正琴」と一緒に演奏してくれないかとその方から頼まれました。
病気の後遺症で目が離せなくなったおじいちゃんのせいで、
自宅に「引きこもり」みたいになっているおばあちゃんに、
久しぶりに大正琴を弾かせてあげたい、と言うのです。
高齢者中心の集まりにおじいちゃんと一緒に来た際に、
そのおばあちゃんに話を持ち掛けてみたら、
「もう何年も弾いてないから・・・」と言いつつ目がキラキラ。
「来月の集まりの時に一緒に弾いてみましょうよ」と言って
お別れしたのが先月のことでした。
ところが・・・。

先日その男性と一緒に働いている女性二人が男性と一緒に、
わたしが仕事をしている事務所に来たのです。
女性二人は男性が「勝手に大正琴の話を決めた」と腹を立てていました。
そして、わたしとその男性に「誰がいつ言い出したことなのか」
「おばあちゃんにどういう言い方をしたのか」など、
結構キツい言い方で尋ねたのです。
わたしは、女性二人がどうしてそんなに腹を立てているのかが分かりませんでした。
どうしてそんなに詰問口調になってしまうのかも。
男性は怯えた表情でうつむいて黙ってしまっていました。
わたしは「おばあちゃんを元気にしてあげたい」とその方が言っていたこと、
大正琴の話をしたときにおばあちゃんが本当に嬉しそうな様子だったことなど、
慎重に言葉を選んで話しました。
そうしないと、あとでその方がひどく責められることになるかも知れないと
思ったからです。
途中、電話が入り、男性が事務所の外に出ました。
すると、女性の一人が「栗ちゃんごめんね、うちの事務所で話せば良かったんだけど。
何かわたしたち二人で彼を責めるみたいになると困るから」と言ったのです。
それを聞いて、それまで自分の机で黙って仕事をしていたわたしの上司(女性です)が、
「ごめんね、あそこで聞くともなしに聞いてたけど、
結構キツい口調だったよね。
責めてるようにしか聞こえなかったけど?」と言いました。
何とも言えない空気が事務所に流れました・・・。

三人が帰ったあと、「だからなんだね、事務所から電話して来ると、
彼の声がまるで蚊の鳴く声みたいで、全然聞こえないのは。
きっと後で何か言われると困ると思って、
小さい小さい声で話すんだよ」と上司が言いました。
「そうかも知れませんね」と答えながら、
わたしの頭の中では、怯えた表情でうつむいて座っていた男性の姿が、
社会人1年生でいろいろ苦労しているうちの息子と重なってしまい、
何だか泣きたいような気持になって困ってしまったのでした。