まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

応えるひと言

娘が県外の大学に進学し、
夫婦二人暮らしになって2か月近くになりました。
週に3日、朝9時から夕方5時まで働いているし、
月に1度老人ホームでのボランティアをしているし、
不定期で入る仕事も月に1、2度あるしで、
そこそこ忙しい毎日を送ってはいます。
夫も夫なりに気を使ってくれているのか、
娘が家を出るのと前後して、
家にあったゲーム機や膨大な数のソフトを全て妹のところへ送り、
「ゲーマー生活」にピリオドを打ちました。
夫婦二人の会話は格段に増えたと思います。
でも・・・心のどこかでやっぱり寂しい。
娘の笑顔や笑い声が消えたアパートは
急にガランと寂しくなったように感じられますし、
仕事の行き帰り、
娘が着ていたのと同じ制服に身を包んだ少女たちの姿を見ると、
なぜだか娘の姿を探してしまうわたしがいます。
もういなくなってしまっていると
頭では分かっているくせに、
気持ちが付いて行けないままなのです。

昨日、事務所の女性上司にこんなことを言われました。
「栗さんの娘さあ、今は『大変だ、大変だ』なんて言ってるみたいだけど、
そのうち『お母さん、もういらない』って言って来るに決まってる。
そうなったら、栗さんどうするの?
栗さんさあ、『お払い箱』になるんだよ」。
「まあ、いずれそうなるでしょうね。
そうなって初めて『子育て終了』ってことでしょうから」
と答えたわたしでしたが、その「お払い箱」という言葉が、
心の奥のどこかにトゲのように刺さってしまいました。

仕事の帰り道、自転車でちょっとだけ遠道して、
お城の跡へ行きました。
小さな城跡にはこれまた小さなお堀があり、
緑色の水がこんもりと茂った木々の葉を映していました。
わたしは自転車を止め、
お堀を渡る風がさざ波を立てる様子をしばし眺めました。
地元では桜の名所と言われている城跡。
学校帰りの娘と自転車で待ち合わせて桜を見に来た場所。
桜はまだあまり咲いてなくて、
歯がガチガチするくらい寒かったっけ。
屋台で温かいものを買って二人で食べたな・・・。
そんなことを思い出していたら、
知らない間に涙がぽろぽろとこぼれてしまいました。

「お払い箱」。
どういうつもりで上司は言ったのかなあ。
彼女は悪い人ではないから、
傷つけようとして言ったのではないとは思うけれど、
今のわたしには応えるひと言でした。