まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

子供のケンカを止めたけれど・・・。

今日、びっくりすることがあった。

上司と外出して車で事務所へ戻る途中のこと、
学校の近くにある公園の前を通ったわたしたちは、
目を疑うような光景を目にした。
自転車で転んだらしい男の子のことを、
傍らに立っている別の男の子が蹴り飛ばしていたのだ、
しかも頭を至近距離から何の躊躇もなく何度も何度も。
頭だけでなく、その子は背中も思いっきり蹴り飛ばした。
まるでかかとで踏みつけるようにして。

「止めた方が良さそうですね」
上司に車を停めてもらい、様子を見に行った。
自転車と一緒に倒れたままの蹴られた子は
激しく泣いていた。
「大丈夫?」とその子に声を掛け、自転車共々起こしてやってから、
わたしは傍らに立っている男の子に言った。
「あのね、何があったのかは分からないけれど、
人の頭を蹴ってはいけないよ。
脳みそがどうにかなっちゃったら、
下手すると死んじゃうことだってあるんだからね」
すると、その子は着ていたタンクトップをずり上げ、自分の顔を半分隠した。
その後で両手をグーの形に握りしめ、
両方の耳にきつくきつく押し当てた。
「話はちゃんと聞いて。」そう言いながらその子の肩に手を置いたら、
その子が全身にものすごい力を込めて立っていることが分かった。
まるで防御姿勢みたいだった。

倒れていた子が乗っていた自転車はBMXみたいな形のカッコいいもので、
しかも真新しかった。
持ち主の男の子はちゃんとヘルメットをかぶり(だから全力で何度も頭を蹴られても
大したダメージを受けずに済んだ)、清潔な服を着ていた。
対して、蹴った側の子はズルズルに伸びたタンクトップに
大きすぎるハーフパンツをはき、足はビーチサンダル履き、
そしてガリガリに痩せて背がとても小さかった。
上司が「何年生なの?」と尋ねたら、自転車の子が
「3年生です。その子は元クラスメイトで、今は違うクラスの子です」
と答えたので、わたしは仰天した。
二人は背丈が20センチ近くも違っていたので、
てっきり蹴った子が下級生だとばかり思っていたから。

どうするか迷ったけれど、自転車の子に相手の子の名前も聞いて、
小学校に連絡を入れた。
実際に見たことと自転車の子から聞いた事の顛末を話して、
「連絡すべきかどうか迷ったのですが、一応お知らせしました」
と言ったら、電話口の先生は
「ご連絡頂けて良かったです、ありがとうございました。
明日本人から話を聞こうと思います」と言ってくださった。

それにしても。
蹴った方の子は、多分家で暴力を受けてる子なんだろう。
親に怒鳴られたり暴力を振るわれたりしている間、
ああやって耳を塞ぎ、全身に力を込めて必死で耐えているんだろう。
そして、嵐が去るのを待っているんだろう。
わたしと上司が自転車の子が無事信号を渡って帰って行ったのを見届け、
車のところに戻った時。
振り返って蹴った側の子の方を見たら、
ついさっきまで全身を突っ張らせて耳を塞ぎ、
防御姿勢を取っていたのが嘘のよう、
彼は笑いながらサーっと公園に駆け込んで行ったのだった。

・・・あの子はどんな大人になるんだろうな。