まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「近いものは遠く、遠いものは近く」な関係?その2

まず、こちらの記事をお読みください。

さて、わたしは「引きこもり」や「不登校」「ニート」などと呼ばれる人たちと、
仕事上で接することがあるのですが。
その中のひとり、A子ちゃんから昨日ビックリするような相談をされました。

それは、A子ちゃんにLINEで送られて来たメッセージが発端でした。
「元カレの子どもが出来たみたいなんやけど、
どうしたらええんやろ?」

「ねえねえ、こんなのLINEで送られて来た!
怖いよー、怖いよー、あたし一人でこんなのどう返事したらいいか分かんないよー」
コピーを取っていたわたしの背後でA子ちゃんが突如そう大声で叫んだので、
わたしは「どうしたの?」と尋ねました。
「ねえ、こんなのに、どう返事したらいいのか分かんないよー」
そう言ってA子ちゃんがわたしの鼻先に付き出したスマホ
そこにあったのが先の衝撃的なメッセージだったのです。

ビックリしたわたしは、大人の知恵を総動員して、
とにかく一刻も早く産婦人科へ行って相談すること、
お医者さんに元カレと今カレのことを正直に話した上で、
一体どうすればいいかアドバイスをもらうこと、
病院へ行くまでは元カレにも今カレにも話さずにおくことなどを、
相手へ送信してもらいました。

ようやく相手の子が「分かった、とにかく一人で病院行ってみるわ、
おおきに」とメッセージを送って来て一安心!となったので、
わたしはA子ちゃんに「この人、関西弁だけど、どこで知り合った人なの?」と聞いてみたのです。
すると、驚愕の答えが・・・!

A子ちゃん曰く、相手は大阪に住んでる女の子だということ以外、
どこの誰かも知らないし、相手も自分がどこの誰なのか知らない、とのこと。
それなのに、元カレと何回エッチしたとか、どんな原因で別れたとか、
今カレにどうやってナンパされたとか、生理が来なくて不安だとか、
妊娠検査薬買って2回検査したら2回とも陽性だったとか、
そういうことをバンバンLINEで送って来ると言うのです。
「あたしはこないだ検査受けたけど、子宮の中、すごくきれいって言われたよ。
ちゃんとピル飲んでるからさ、赤んぼ出来たりしないし」
あっけらかんとそう話すA子ちゃんには、
どこの誰かも分からないけれどやたらとLINEで悩みをぶちまけてくる知り合いが、
ざっと数えただけで10人ほど(しかもマレーシアに住んでる子まで!)いるそうです。

・・・50年も生きているけれど、おばさん、いろんな意味でびっくりしちゃったよ。

帰宅してから高校生の娘に見聞きしたことを話し、
「どこの誰かもわからない人にそんなことを相談して来るって、
一体全体どういう了見なのかなあ」と尋ねてみました。
娘曰く、「どこの誰なのかお互いに分からないからこそ、
そんなエグい話を平気で出来るんじゃないの?
お互いによく知ってたら、そんなとんでもない話、とても出来ないでしょう?」
「えーっ、どこの馬の骨とも分からないような相手に、そんな大事なことを相談するの?
もし相手が『22歳の女子でーす』なんて言っておいて、
実は『若い女の子をだましてやろう』って邪な考えを持ってる男の人だったりしたらどうするの?
『困ってるんならうちにおいでよ』なんて言われてホイホイ出掛けて行ったら、
捕まえられてやーらしいことされて、最悪殺されたりしちゃったらどうするの?」
「そん時は『あらあ、残念!』じゃないの?
そんなおバカな奴らのことはよく分からん!
でも、身近な友達に深刻な相談事はみんなしないよ、だって嫌われるからさ」

子供たちの日常は舞台で演じられる喜劇みたいです。
演じている人たちは、毎日おもしろおかしい話を愉快に演じています。
でも、舞台から一歩下りれば、さっきまで愉快そうに笑っていた俳優一人一人に、
病気の親がいたり、離婚係争中の配偶者がいたり、
問題行動を重ねる子どもに手を焼いていたり・・・。
それでも、彼らは毎日舞台に上がり、幕が開けば愉快な劇を演じ続けるのです。
悩みを抱える生身の自分を微塵も感じさせることなく。
本来なら、生身の俳優を支えるのが身近な人々の役目のはず。
でも、子供たちは身近な人々に表舞台に立つ偽りの自分だけを見せ続け、
どこの誰とも分からない人たちに傷ついた自分を投げ出すのです・・・。

だからこそ、青少年が自殺したりすると身近な友達も親もみんな
「全然悩んでるような素振りに気付かなかった」と言うのでしょう。
近いものが遠く、遠いものが近いという、ねじれた人間関係。
日本の子供たちの心は、大人世代が思っているより深刻に病んでいるようです。
そうさせる原因は何なのでしょうか。