まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

食わず嫌いにならずに是非ご覧ください!~NHKドラマ「精霊の守り人」~

精霊の守り人」が実写でドラマ化されると聞いた直後、
わたしはNHKの「お客様の声」に「止めてください!」とメールを送りました。
Production I. G制作のアニメが非常にいい出来だったので、
是非そのままの形で全編アニメ化して欲しいと。

でも、今回のドラマを見て考えを改めました。
これは、実写でなければならなかったのです。

チャグムをたった一人で守らなければならないバルサは、
何人もの追手(「狩人」)と何度も戦わなければならなくなります。
バルサは非常に腕の立つ短槍遣いではありますが、
決して無敵のヒロインではありません。
小さな手傷など数えきれないほど、
瀕死の重傷を負うことさえ幾度となくあるのです。

その辺りのリアリティが、アニメではどう頑張っても出せません。
バルサが苦痛に顔をゆがめたり腕から出血する様子をどんなに精緻に描き、
上手な声優さんが苦しそうな声をあてても、やはりそこには限界があります。

今回の実写版の戦いの場面は、バルサの「痛み」が怖いくらい伝わって来ます。
切られ、出血し、息が上がり、苦痛に顔をゆがめ、足がよろけるほど疲れ切っても、
それでもなお短槍を振るい必死でチャグムを守り抜こうとするバルサの姿。
見ているだけで涙がこぼれてしまいました。

テレビゲーム(とはすでに呼ばないんでしょうか?)で育って来た子供たちには、
戦いとは「命のやり取りだ」ということが分かっていないようです。
VRバーチャルリアリティ)の中で起こっていることが真実であるとでも思っているのか。
VRはリアルな世界ではないと言う当たり前のことが、
実はあまり実感出来ずに育ってしまっているような気がします。

第2話の中で、バルサが少女時代に初めて人を殺した時の逸話が出て来ました。
(これは短編集「流れゆく者」に収められている話です)。
自分の手がどす黒い血に染まっているのを見ながら、
少女だったバルサは半狂乱になって泣き叫びます。
たった一つの命をめぐって殺し、殺されること。
その恐ろしさ、そして重さが見ている側に伝わって来る場面でした。

だからこそ、原作者の上橋菜穂子さんは今回の実写ドラマ化にOKを出されたのだと思います。

確かに、帝が訳の分からない水晶玉みたいなものを持ってたり
(しかもなでると怪しい音が出るという、訳分からん機能付き)、
タンダ役の人がちょっと棒読みっぽかったりと問題がない訳ではありませんが、
老若男女、どなたも是非食わず嫌いにならずにご覧ください!とオススメしたいと思います。

ドラマは飽くまでも原作のエッセンスだけしか伝えていません。
児童文学というくくりではありますが、大人が読んでも十分に面白い、と言うよりは、
原作第2巻の「闇の守り人」などは大人でないと感動出来ない!という内容の物語です。
文化人類学者でもある上橋さんの、
長年の研究とフィールドワークなどの豊かなバックグラウンドから生み出された、
どっしりとした素晴らしい作品ですので、是非原作も読んでみてくださいね!!!