まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

思い出のリンゴ

夫の知り合いの奥さんからリンゴが送られて来た。
「高徳」という、初めて聞く品種のリンゴ。
添えられていた手紙には、
「娘の好物だったリンゴです」
と書かれていた。

15歳にもならないうちに、
自死してしまったお嬢さんの好物だったリンゴ・・・。

一つ切ってみた。
信じられないくらいたっぷりと蜜が入り、
黄金色した果肉はサクサクとしていて、
「ふじ」とはまた違った香気がある。
食べると「ふじ」よりもさらに酸味が少なくて、
あっさり爽やかな甘さだけが口いっぱいに広がった。
とても美味しいリンゴだった。

「お母さん、やっぱり美味しいね、このリンゴ」
自死した娘さんは目を細めながら毎年このリンゴを食べたのだろう。
そして、お母さんは娘がいなくなった後も、
毎年毎年仏壇にこのリンゴを供え続けるのだろう。
店先で、リンゴ畑で、赤く色づいたリンゴを見るたびに、
決して大人になることのない娘のことを思い出しつづけるのだろう。
リンゴだけじゃない。
あらゆるものから娘を思い出し、
同じ年恰好の子を見るたびにあらゆることを後悔し、
多分ずっとずっと心の中で涙を流しつづけるのだろう・・・。

亡くなった人のことを想うことが供養になるのだという人がいる。
せめて、その子のことを想いながら、
残りのリンゴを大切にいただこうと思う。