まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

春待ちモード

急激に冬が近づいています。
週間天気予報には「雪」の文言、
ラジオは「早めにタイヤ交換を」と繰り返しています。
窓の外に目をやれば、アパートに立つ桜の大木から、
はらはらと葉が舞い落ちています。
「きみがこころの若きゆめ 秋の葉となり落ちにけむ」
この季節を迎えるたびに心に浮かぶ物悲しい詩。
もう虫の声は聞こえなくなり、
咲いている花と言えば菊の花ばかり。
やがて雪が降り始めれば、
白菊なのか雪が積もっただけなのかも分からなくなります。
 
とうとう冬が来るんだな・・・。
ここの冬が大の苦手です。
太陽は冬期休業に入ってめったに姿を見せず、
どんよりとした曇天の空から来る日も来る日も雪が降って来る・・・。
見回せば360度全周をぐるりと山に囲まれていて、
重苦しい閉塞感に息が詰まりそうになってしまう・・・。
人間もサケのように生まれ育った町の空や空気や光を懐かしむものなのでしょうか。
年経るごとに懐かしい場所へと帰りたくなるものなのでしょうか。
 
いけない、いけない。
わたしはこうして結婚してすぐ「季節性うつ」になってしまったのでした。
お医者様曰く「仙台の人は季節性うつになりやすいみたいだよ」。
北風が強くて寒いけど晴天続きで日光たっぷりの冬、
「やませ」の影響でさほど暑くならず曇りがちの夏。
そんな場所で二十数年間育ってしまったからなあ。
 
ふと気が付くと結婚するまでと結婚してからが同じ年数になりました。
仙台を離れてからもうそんなに経ってしまったんだな。
いろんな町に住んだのに、わたしの身体に刻まれているのは
やっぱり仙台の空や空気や光のままなのか。
人もサケもあまり変わらんな。
 
とにかく。
これから3月いっぱいまで続く長い冬にどうにかして耐えて行かなければ。
・・・という訳でわたしは「春待ちモード」に入ります。
心を蝕まれずに、ただ粛々と冬をやり過ごすために身に着けた知恵みたいなもの。
つるつるの凍結路面をペンギン歩きしながら、
寄せても寄せてもあとからあとから降り積もる雪をエンドレスで寄せ続けながら、
わたしの心は春を待ち続けます。
そう、ハインラインの「夏への扉」で猫のピートが夏に続く扉を探し続けたみたいに、
わたしも心の中で「春への扉」が開くのを待ち続けるのです、
ほんものの春がやって来るその日まで。