まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

歌詞の力~映画「アンコール!」をみて~ネタバレあり、注意

映画「アンコール」については「映画」の書庫にレビューを載せました。
ネタバレになるので、映画未見の方はこちらの記事はスルーしてください。
 
この映画の中に、とても大切な歌が2曲出てきます。
1曲目はシンディー・ローパーの「トゥルー・カラーズ」。
ガンの再発が分かったマリオンが、
合唱コンクールの予選で歌った曲。
「本選には出られないかもしれない」と知りながら、
マリオンは勇気を振り絞って聴衆の前に立ちソロで歌うのです。
それは、歯に衣着せぬ物言いと辛らつで不愛想な態度によって、
「偏屈で気難し屋」と誰からも思われているアーサーに、
長年連れ添ったマリオンが命をかけて贈る愛の歌。
 
「わたしにはあなたの本当の色が見える、輝く色が
わたしにはあなたの本当の色が見える、だからあなたを愛しているの
だから本当の色を見せるのを怖がらないで
あなたの本当の色は美しいんだから、まるで虹のように」
 
余命幾ばくもない愛するマリオンが、
心を込めてこう歌ってくれても、
不器用で感情を表すことが出来ないアーサーは、
無表情なまま歩み去り、物陰でタバコをふかすことしか出来ないのです。
・・・本当はマリオンへの深い愛でいっぱいだというのに。
そのマリオンをもうすぐ失わなくてはならないという思いで胸が張り裂けそうだというのに。
 
あとの1曲はビリー・ジョエルの「ララバイ」。
合唱コンクールの本選で、アーサーがマリオンを想いながら、
ひとり大観衆の前に立って歌った歌。
この曲、まるで「この映画のために書かれたのでは?」と思えるほど、
旅立ってしまった愛する人に贈る歌として聞いてもぴったりの美しい歌詞なのです。
ちょっと長いですが、全部引用します。
 
Goodnight, my angel    おやすみ、ぼくの天使
Time to close your eyes   もう目を閉じる時間だよ
And save these questions for another day  聞きたいことは別の日に取っておこう
I think I know what you've been asking me  何が聞きたいかは分かってる気がする
I think you know what I've been trying to say  きみはぼくが何を言おうとしてるか分かってる気がする
I promised I would never leave you  きみをひとりにしないと約束したね
And you should always know  だから忘れないでいて
Wherever you may go  きみがどこへ行こうと
No matter where you are  きみがどこに居ようと
I never be far away  ぼくはきみから離れやしないと
 
Goodnight, my angel  おやすみ、ぼくの天使
Now it's time to sleep  おやすみの時間だよ
And still so many things I want to say  言いたいことはまだまだたくさんあるんだ
Remember all the songs you sang for me エメラルド・ベイへ船で行ったとき
When we went sailing on an emerald bay  きみが歌ってくれた歌を全部覚えているよ
And like a boat out on the ocean  海に漕ぎ出した船のように
I'm rocking you to sleep  きみを揺らして眠らせてあげる
The water's dark  海の色は深い青
And deep insaide this ancient heart  ぼくの古ぼけた心の中で
You'll always be a part of me  きみはいつだってぼくの一部分なんだ
 
Goodnight, my angel  おやすみ、ぼくの天使
Now it's time to dream  夢見る時間だよ
And dream how wonderful your life will be  きみの人生がどんなに素敵なものになるかを夢見ておくれ
Someday your child may cry  いつの日にかきみの子供が泣き
And if you sing this lullabye   きみがこの子守唄を歌ってやったなら  
Then in your heart  きみの心の中に
There will always be a part of me   ぼくの一部分がずっと生き続けることになる
 
Someday we'll all be gone  ぼくたちはみな いつかは天に召される
But lullabyes go on and on  でも子守唄はずっとずっと続いていく
They never die  それは決して終わることはない
That's how you and I will be  きみとぼくとが永遠であるように
 
本来はビリー・ジョエルが当時7歳だった娘のために書いた曲だそうですが、
この映画のシチュエーションにぴったりの美しい歌詞。
映画の中でアーサーはちょっと歌が上手い素人のおじいちゃん、という設定なので、
決してプロの歌手のような上手な歌い方ではないのですが、
それがかえって歌に真実味を与え、心を揺さぶる歌唱となっています。
 
それにしても、洋楽には本当に素晴らしい歌詞の曲がたくさんありますね。
妻から夫へ、夫から妻へ、既成の曲で愛を贈り合うことができるなんて、
何と素敵なことでしょう。
翻ってJ-POPはと言うと・・・。
ちょっとお寒い限りではないかな、と思います。
誰とは言わないけれど、長年歌っているアーティストでも、
デビューした時のイメージを何年経っても手放そうとしない気がします。
若々しいと言えば聞こえはいいけれど、
成熟しないと言われればそれまで。
長年生きている人でなければ分からないような人生の機微を
なぜ歌おうとしないのかがとても不思議です。
日本では歌の世界でも「アンチエイジング」花盛りなんでしょうか。