まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

ジェーン・エア

あれはわたしがまだ小学校4年生くらいだった頃。
熱を出して学校を休んだわたしは、東日本放送で放送していた
「お茶の間名作劇場」を見た。
 
その日放送していたのは「ジェーン・エア」というモノクロの洋画だった。
わたしは、その暗く陰鬱な雰囲気にすっかり魅了され、
最後までドキドキしながら見た。
そして、見終えるとまっすぐ2階の姉の部屋へ直行した。
そこに、「ジェーン・エア」と書かれた古い文庫本があることを知っていたから。
 
それは、母が娘時代に読んでいた本で、
完訳版ではなく、抄訳版だった。
でも、わたしは大満足だった。
肉親からひどい迫害を受けて孤児院へ入れられたジェーンが、
愛想のかけらもない、非常にシニカルな女の子なのも心地よかったし、
大人になってからのジェーンが背がスラリと高くもなく、
見目麗しい訳でもなく、貧しい孤児院上りの女性であるにも関わらず、
紆余曲折を経て幸せになれる結末に、本当に胸を打たれてしまったのである!
 
・・・ませた子どもだったなあ、と思う。
その頃のわたしは、「赤毛のアン」が大っ嫌いだった。
そして、ちょくちょく姉のいない時を見計らっては部屋に忍び込み、
ドキドキしながら「ジェーン・エア」を読む10歳だったのである。
 
小さかった頃いつも可愛がってくれ、遊んでくれた父に
「可愛げのないガキだ、お前は」と言われたのもこの頃のこと。
あの日のわたしは、父の言葉にいたく傷付いてしまったのだけれど、
今になって振り返ると、「そう言われても致し方なかったなあ」と
思ってしまうのだった。