まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

ときどき「ちりとてちん」~第29話~

晴れの日も、雨の日も、「ちりとてちん」を見ております。
お天気だけでなく、わたしの心が照る日にも降る日にも。
そして、15分の間に笑ったり泣いたり出来る自分に、
「まだ大丈夫だ」と安心する毎日なのであります。
 
今日のイチオシ!
「・・・涙のにおいや。」
 
さてさて、今週の「ちりとてちん」、A子の登場で早々と失恋してしまった喜代美が、
草々にいさんから逃れるように小浜に帰ってのお話であります。
景気が良かったはずの実家の塗り箸屋には閑古鳥が鳴き、
おまけに導入した乾燥機は支払いが済まないうちに故障。
ほんの数か月前には芸者さん(おばあちゃんの昔の仲間)を呼んで、
うちで大騒ぎしていたのが嘘のように和田家は財政が逼迫していたのです。
みんなちょっとしたことでイライラして、すぐ険悪なムードに。
「田舎へ帰って家族に失恋の痛手を癒してもらおう」という気持ちだった喜代美は、
反対に家族を元気づけようと奔走しますが、全て徒労に終わります。
(小草若の「寿限無」のあまりのつまらなさに、家族が凍り付いたり)
すると、そこへ草々にいさんが登場。
途端に若狭塗り箸製作所のバカボンの求婚を受けてもいい、と言い出す喜代美。
あまりのことに仰天する家族の中で、
ただ一人糸子だけは喜代美が草々にいさんに失恋したこと、
バカボンの求婚を受けてもいいと言いだしたのはそれでやけくそになってのことだと見抜きます。
今日のイチオシ!は「どうして失恋したと分かるのか?」と家族に問われての糸子のセリフです。
草々にいさんの傍らで、喜代美が必死で涙をこらえていた、
その「涙のにおい」でそう分かったのだ、と。
それでも狐につままれたような状態の男性陣をよそに、
小梅さんだけは「そう考えれば辻褄が合う」と納得します。
(この辺り、脚本を書いているのが女性だけあって、
女の勘の鋭さ、そして女性の間だけでしか通じない、
「ツーと言えばカー」的な伝わり方を描くのが本当に上手です)
そして、喜代美のいないところで家族たちは、喜代美がどんな気持ちで小浜へ帰って来たのか、
さらに、そんな気持ちにも関わらず喜代美が自分たちを元気づけようと、
どんなに頑張っていたかに改めて思いをするのです。
・・・と、聞こえて来る楽しげな落語。
「聞いてられません」と喜代美に言われた「次の御用日」を、
草々にいさんが改めて喜代美に聞かせている声に誘われて、
家族たちも箸工房へ移動します。
すると、振り返る喜代美。
その顔は輝くような笑顔でした。
「小浜へ帰って来て初めて、喜代美が笑っている!」そんな気持ちで家族たちは満たされ、
草々にいさんの「次の御用日」が響く中、和田家全員が幸せな笑い声を上げたのです。
それは、正太郎の10回忌、ちょうどその日のことでありました・・・。
 
お母さんって、本当に一家の太陽なんだなあ、と、
このドラマを見ているとつくづく感じます。
わたしの父は結構「詐欺」に遭ったことがあり、
先物取引とか、株とか、ソーラー発電とか、床下扇風機とか、
何度もいいカモにされて大損をしたことがありました。
そのたびに実家では数百万円単位の損失を出し、
財政状態は逼迫しました。
(でも、ピアノだけは習わせてもらえてたんですから、その点だけは母に感謝!です)
その時に実家に漂っていた空気!!!
息が詰まるような、本当に窒息しそうな感じがする毎日でしたし、
母のイライラは全て間抜けなわたしへの八つ当たりになって表れました。
一挙手一投足、全てに母の小言が付いて来るだけでなく、
父への不平不満も全てわたしにぶつけられることになりました。
「・・・ふん、ドラマなんて、所詮は作り話だから。
現実世界で糸子みたいなこと出来る人なんか、いるわけないわよ」と、
母はきっと言うと思います。
でも、わたしは、どんな状態になっても、
わたしに出来る限り糸子さんみたいなお母さんでいたい、と思っています。
(だから、やっとやめた精神科の薬も、自分の限界だと思ったら、
あっさりまた服用を再開するわけです。
ちょっとだけ薬の力を借りて元気でいられるなら、
薬を飲まずにどんより超低空飛行して家族に心配と迷惑をかけるよりマシかなあ、と。)
糸子さん、素敵です。
本当の意味で素敵な女性というのは、「美魔女」とか呼ばれてるような女性たちのことではなく、
糸子さんのように、温かく、優しく、しなやかで、しかもチャーミングな人のことではないでしょうかね。