まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「あたし、泣いちゃうよ。」

「名前はひ・み・つ」と言っていたボランティア先の女性の名前が分かった。
その方のマグカップに名前が貼付されていたのだった。
「分かった!ふみさん。高取ふみさんって言うお名前でしょう!」(もちろん仮名)
わたしが叫んだ途端、ふみさんの顔がパッと明るくなり、
「ハイ。ご名答です」。
「ふみさん、ふみさん、ふみさん。いい名前!
百回呼ぼうっと。」そうおどけてみせたら、
ふみさんはすごく嬉しそうな顔をして笑った。
一緒にお茶を飲み、同じテーブルにいる認知症のかなえさん(仮名)に、
ふみさんは笑いかけたり、百面相して見せたり、話しかけたり。
そんなふみさんがお茶目で可愛らしくて、
わたしも一緒になって二人と大笑いした。
 
お昼近くなって傾聴の終了時間になった。
「もう帰りますね」と言うと、ふみさんは
「帰っちゃうのかい?・・それじゃ、あたし、泣いちゃうよ」
いつもニコニコしてる顔がうつむいてゆがんでいた。
「また2週間後に遊びに来ますから。
もうふみさんっていう名前だって分かったから、
この次来たら百回お名前呼びますからね!」
そう言ってふみさんと握手をして、
かなえさんとも握手をして帰って来た。
 
利用者さんの名前を覚えないでください、
それも個人情報ですから、と施設側からは注意されている。
でも、名前で呼んでもらった方が嬉しいんじゃないかなあ。
「ひ・み・つ」って言って名前を教えてくれなかったふみさんも、
ちゃんと名前で呼んだらものすごく嬉しそうだったもの。