まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

「ロード・オブ・ザ・リング」を第2作まで娘と見た

ファンタジーの金字塔「指輪物語」の完全映画化、
ロード・オブ・ザ・リング」を2作目まで娘と見ました。

娘は、エルフの弓の名手「レゴラス」をひと目見て、
ズキュン!とハートを撃ちぬかれてしまったそうです。
「何、この人、一体何なの?!
世の中にこんな美しい男の人が実在してたなんて、信じらんなーい!」
・・・と言うわけで、
娘はひたすらレゴラスだけを見てたそうな。
(そして、一度何かに夢中になると大変なことになっちゃう娘は、
授業中もぼーっとしながら「レゴラスさま~」なんて考えてしまってるそうで・・・。
勉強しようという気が無いんかーい!と言いたくなります。)

わたしは、以前見たときと違う見方しかできなくなってる自分に、
ちょっと驚きながら見ました。

まず、「圧倒的な力」の持つ恐ろしさ!
「これを手にした者は全てを統べることが出来る」という、
恐ろしい魔力を持つ指輪を前にすると、
どんなに欲と無縁だった者でも、無垢のままではいられないのです。
ましてや、「もっとも欲にまみれた種族」とされている人間など。
それを手にして、圧倒的な力で世界を我が物にしたいという欲に駆られるものが次々と。
(しかし、ファンタジーなので、一応ギリギリで踏みとどまることになってますが)

そして、弓矢や槍、投石器や剣しかなかった頃の、
戦の恐ろしさ、悲惨さ!
(この辺りは、以前見た中世ヨーロッパへのタイムトラベルものである
「タイムライン」でも描かれてました)
特に第2作の「二つの塔」では、それが詳細に描かれてまして。
矢を砦からいくら射掛けようと、わらわらと壁に取り付いて登って来るものたちを、
防ぎきれなくなって行き・・・。
挙げ句の果てには、「難攻不落」と思われていた砦も、
敵の手にした火薬(「指輪物語」では火薬を扱うのは魔法使いの仕事。
つまり、悪の側に寝返った魔法使いが敵方に火薬を渡したということ)であっさり破られ、
敵が城の内部にまで怒涛の勢いで雪崩れ込んで来ます。
城を守るのは、老人と子どもばかりの男衆。
戦に先立ち、敵に備えるために戦えそうな者はすべて徴用される場面があります。
年老いた夫と抱き合って泣く老いた妻。
老いた妻を残して行く夫の目に浮かぶのは不安の色だけです。
そして、母親から引き離される、年端も行かない少年たち。
「やめて、お願い!」(映画は英語なので、多分「No!Please!」と叫んでいるのだと思いますが、
この場面はセリフが一切排されています)
母親は狂ったように叫び、我が子の方へ手を伸ばしますが、
少年はほんの一瞬で「男」になってしまったかのように、
大人びた目をして剣を取るために歩み去ります。
そして、その先に待っていたのは、絶望的に劣勢な、勝つ見込みのない戦い・・・。
もう、見ていて胸が潰れてしまいそうでした。
まあ、ファンタジーなので、「もうお終いだ」というところで、
ちゃんと援軍が来てギリギリ勝利することにはなってますが、
それでも、戦の後には死体累々、つい先ほどまで、
「また人間と共に戦えることを誇りに思う」と言ってたエルフたちも、
物言わぬむくろとなって瞑目してしまってる訳で・・・。
ましてや、描かれはしないけれど、戦の経験がなかった少年たちや、
老いて力の衰えた老人たちなどは、大半が死んで行ったはずだよなあ、
一応敵を退けたとは言え、老いた妻たちや、少年の母親たちにとっては、
悲しみと絶望の日々が始まることになっちゃうんだよなあ・・・などと、
画面が戦の場面から切り替わったあとも、
「普通の村びとたち」のこれからが気になって仕方がなかったのでした。

そして、もう一つ。
「火」というものが、「指輪物語」の中では、
「悪」として描かれていることに気付きました。
森の木々を切り倒し、火の力を使って邪悪な生き物である「オーク」を作り出すのは、
サウロン(何といったらいいか・・・世界の諸悪の根源みたいな恐ろしい存在)の側についた、
「白の魔法使い」ことサルマンが使う技。
反対に、サウロンに対抗し、サウロンの力の源である「一つの指輪」を葬り去ろうとしている側は、
火は必要最小限しか使わないのです。
(そう言えば宮崎駿の「風の谷のナウシカ」の中にも、
「あなた方は火を使いすぎる」という印象的なセリフがありましたね。)
指輪物語」自体が、トールキンによる西洋文明批判的な側面を持っているのでしょうか。

原作は3分冊方式でも1冊あたり700ページ以上という長大な作品で、
緊張感を持って読み通すのはなかなか大変です。
(昔一度読み通したはずなのに、ほとんど忘れてました
映画版は割愛した部分ももちろん多々ありますが、
非常に上手くまとめてある感じがします。
何より、VFX(特殊視覚効果)の劇的な進歩により、
トールキンの描いた壮大な中つ国(トールキンの作品に登場する、
今のヨーロッパに7000年ほど前に存在していたとされる架空の国々のこと)の全てが、
鮮やかなビジュアルとなって動くのを見られるのはありがたい限り。

第3作「王の帰還」も、近日鑑賞予定です。
映画版も1本あたり3時間以上の超大作なので、
これから見る方は是非時間に余裕のある時にどうぞ。