まだまだいなかのねずみ

日本の片隅で妻・母・非正規雇用者している栗ようかんの思索と日常

お背中に模様がある人がいるの!

伝統的な刺青をした外国の方が、
銭湯(プールだったかな?)への入場を断られた、と新聞に書いてあった。
その記事を読んだ途端、16年前の出来事を思い出した。
 
夫の転勤に伴い、わたしたち家族は東京都内の社宅で暮らすことになった。
そこはやたらと大きなマンションみたいな建物で、
ぱっと見立派そうだけど、中はボロボロで相当古くなっていた。
引っ越してすぐ同じ階の責任者だという奥さんがやって来て、
「この部屋でお風呂を使うと下の部屋で水漏れがするんです。
今修理中ですから、直るまで風呂は使用禁止、
近所の銭湯に行ってください」と言った。
東京へ行く前に住んでいた町ではもう銭湯なんて残ってなかったから、
「東京には銭湯があるのか!」とびっくりした。
地図で見ると、中央線の線路の向こうに銭湯があることが分かったので、
2歳だった息子を連れてその日の夜に入りに行った。
息子の身体を洗ってやり、さて、今度はわたしが髪の毛を洗って・・・と、
息子の甲高い大きな声が聞こえてきた。
「おかあさん、来て、来て!
お背中に模様がある人がいるの!」
???
背中に模様???
まさか・・・!!!
急いでシャンプーを流して行ってみると、
そこには背中一面に見事な牡丹の彫物を入れたお姐さんがいた。
年の頃は50過ぎだっただろうか。
「息子が失礼なことを申し上げて・・・。
ごめんなさい、今日、生まれて初めて銭湯に入ったものですから」と、
訳の分からないことを言って謝るとその姐さんは「アッハッハ」と豪快に笑い、
「坊主、確かに背中に模様があるんだから仕様がないよなあ?
お前さん、いい面構えしてる。
この子は大物になるよ。将来、楽しみだねえ」と可笑しそうに言った。
 「その筋の方」とは全く接点がなかったから、
もしかしてすごまれたりするのでは・・・と内心びくびくしていたわたしは、
姐さんのその言葉にすっかり嬉しい気持ちになった。
 
銭湯やプールの入口には「刺青をした方の入場お断り」とは書いてあるけどね。
一律禁止されたら困る人もいるんだろうな。
でも、一方ですごんだりする人がいるのも事実だしね。
何でもそうだけど、規則で一律に取り締まるのは難しいよね。